本・書評
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「調査ものがいいね」 井上靖が才能認めた新聞記者・山崎豊子の記事
2024/6/22 10:01 2866文字「白い巨塔」など、数々のベストセラー作品を世に送り出した作家、山崎豊子(1924~2013年)。小説を書き始めたのは新聞記者時代の上司、井上靖との交流がきっかけとされる。この2人を結びつけた1本の記事がある。 <紡績女工を現地にみる> 終戦翌年の46年10月、山崎が書いた渾身(こんしん)のルポルタ
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手がかりは「女工哀史」〝取材の鬼〟山崎豊子の記事を探し出すまで
2024/6/22 10:00 2688文字「あった……」。文末の署名を見つけ、息を吐いた。 作家・山崎豊子(1924~2013年)が毎日新聞記者時代に書いた、女性労働者に関する記事が見つかった。山崎が生前、当時の上司だった井上靖から褒められた逸話を語っていた一本。出版関係者らに存在は知られていたが、長く埋もれ、光があてられたことはなかった
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難病と闘う子どもたちへ 「先輩」の絵を絵本に 寄付募る 福島のNPO、28日まで原画展 /福島
2024/6/22 05:01 645文字病と闘う子どもたちを励ますため、小児がんなどの難病の治療を経験した“先輩”が描いた絵を絵本にしようと、福島市のNPO法人「パンダハウスを育てる会」(山本佳子理事長)が寄付を募っている。活動を広く知ってもらいたいと、28日まで同市大町の東邦銀行本店ロビーで原画展を開いている。 パンダハウスは、県立医
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今週の本棚
若島正・評 『「細雪」の詩学 比較ナラティヴ理論の試み』=平中悠一・著
2024/6/22 02:01 1354文字(田畑書店・5500円) ◇著者の呼吸の変化まで、つぶさに まだ十代の頃に一九八四年度の文藝賞を受賞してデビューした作家の平中悠一が、谷崎潤一郎の『細雪(ささめゆき)』をナラティヴ理論の枠組みで論じる学術書を出した。これは何をさておいても読まなくてはならない。 本書の構成は、「ナラトロジー、ノン・
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今週の本棚・なつかしい一冊
玉川奈々福・選 『吉原御免状』=隆慶一郎・著
2024/6/22 02:01 1064文字(新潮文庫 880円) 20代の頃、夢中になって読みました。『吉原御免状』は作家のデビュー作です。剣豪・宮本武蔵に育てられた松永誠一郎と、江戸・吉原遊郭の成り立ちをからめた、一種の貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)なのですが、どれだけ歴史書を渉猟して、その上で空想を超絶逞(たくま)しくして、こんな歴
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今週の本棚
伊藤亜紗・評 『あらゆることは今起こる』=柴崎友香・著
2024/6/22 02:01 1367文字(医学書院・2200円) ◇「何気ない日常」それは混沌だと知る ある意味では、日常をつづったノンフィクションである。著者は、「何気ない日常の描き手」としばしば形容される小説家。しかしその日常は「何気ない」のイメージとは程遠い。 まず気になるのは、「引用」の異様なまでの多さだ。SNSでバズったツイー
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今週の本棚・著者に聞く
村井邦彦さん 『音楽を信じる We believe in music!』
2024/6/22 02:00 839文字◆村井邦彦(むらい・くにひこ)さん (日本経済新聞出版・1870円) ◇リスナーと、また近づく 「翼をください」「虹と雪のバラード」の作曲者にして、荒井由実(ユーミン)、吉田美奈子、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の音楽を世に送り出した音楽出版社、レコード会社の設立者による自伝である。2
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今週の本棚・話題の本
『しぶとい十人の本屋』=花田菜々子
2024/6/22 02:00 816文字本屋がなくなると言われ続けて20年ほどになる。そのあいだ本屋はずっと減り続けており、特に本屋がゼロの自治体の問題は深刻だ。だが一方で、「意外となくなりはしなかったな」とも思う。しかも「独立書店」等と呼ばれるセレクト型の小さな店は年々増え続けている。というか、何を隠そう、実は私自身も勤務先の書店が閉
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今週の本棚
内田麻理香・評 『エビデンスを嫌う人たち 科学否定論者は何を考え…』=リー・マッキンタイア著、西尾義人・訳
2024/6/22 02:00 2125文字◆『エビデンスを嫌う人たち 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?』 ◇筋金入りの科学否定論者と向き合う (国書刊行会・2640円) 2017年のトランプ米大統領誕生とともに、科学的な事実が政治的な利益のためにねじ曲げられる「ポスト真実」現象が注目を浴びた。科学の世界では決着がついているのに
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今週の本棚・情報
ベストセラー
2024/6/22 02:00 169文字<1>豊臣仁義 三河雑兵心得(14)(井原忠政著・双葉社) <2>よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続(宮部みゆき著・KADOKAWA) <3>ソードアート・オンライン(28)(川原礫著・KADOKAWA) <4>黒牢城(米澤穂信著・KADOKAWA) <5>新 本所おけら長屋(1)(畠山健二
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今週の本棚・編集後記
テレビドラマ「セクシー田中さん」の原作漫画家が…
2024/6/22 02:00 161文字テレビドラマ「セクシー田中さん」の原作漫画家が急死した問題を巡り、日本テレビと小学館の2社がそれぞれ、今月までに調査報告書を公表しました。「楽しい」を提供するエンターテインメントの世界で「悲しい」出来事を繰り返してはならない。報告書を巡る報道に携わった者として、その思いを強くしています。(代)<デ
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今週の本棚
『地下演劇 第7号 希望の原理』=芥正彦・責任編集
2024/6/22 02:00 517文字(スローガン・4950円) 『地下演劇』の刊行は50年ぶり。寺山修司氏が創刊し芥正彦氏がバトンタッチした後、6号で停(と)まっていた。でもこの異形の装丁は何だ! 九二七頁(ページ)で四五○○円+税。黒を基調に地の底から這(は)い出した悪霊の雰囲気が漂う。ただ読んでみれば、この時代に宛てたもっとも真
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今週の本棚
『韓国映画から見る、激動の韓国近現代史』=崔盛旭・著
2024/6/22 02:00 515文字◆崔盛旭(チェソンウク)著 (書肆侃侃房・2420円) 保守派で検察出身の尹錫悦(ユンソンニョル)氏が左派から政権を奪還した2022年の韓国大統領選において、理解しにくかったことがある。外交では日米と摩擦を繰り返し、内政では検察の弱体化に執念をもやす、どこか危うい感じがただよう左派政権が根強い支持
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今週の本棚
江國香織・評 『死んでから俺にはいろんなことがあった』=リカルド・アドルフォ著、木下眞穂・訳
2024/6/22 02:00 1317文字(書肆侃侃房・2310円) ◇主人公と五里霧中を進む新鮮体験 とてもいきのいい小説だった。つかまえたばかりの魚みたいで、読み終っても胸の内でつぴつぴ跳ねる。 語り手の「俺」には妻と幼い息子がいて、物語の冒頭、三人は街で買物をしている。街はちょっと寂れた感じで、店は「バラック」なのだが、ごくありふれ
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今週の本棚
飯島洋一・評 『男のイメージ…』=ジョージ・L・モッセ著、細谷実、小玉亮子、海妻径子・訳
2024/6/22 02:00 1478文字◆『男のイメージ 男らしさの創造と近代社会』 (中公文庫・1430円) ◇「大義のために死ぬ」神話の世界 本書は国民主義(ナショナリズム)の「男らしさ」の理想を論じている。同じ著者による『ナショナリズムとセクシュアリティ』(佐藤卓己ほか訳・ちくま学芸文庫)では、「ドイツでも、対ナポレオン解放戦争に
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今週の本棚
『SFマンガで倫理学 何が善くて何が悪いのか』=萬屋博喜・著
2024/6/22 02:00 501文字◇『SFマンガで倫理学 何が善(よ)くて何が悪いのか』 (さくら舎・1980円) レストランで猫の顔をしたロボットが料理を運んできた。「ありがとうございましたニャン」。見送りながらふと思う。ロボットと人間の境界は何か。皿に乗ったハンバーグにナイフを入れつつ思う。牛や豚は涙を流さなかったのか。 本書
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『共感と距離感の練習』
2024/6/22 02:00 121文字装画がいい。書名との絶妙な響き合い。「共感」前の不安と「共感」後の安心が共に打ち震えている。その決して馴(な)れ合うことのない、厳密な「距離」までもが描かれている。 ◆ 『共感と距離感の練習』(小沼理著・柏書房・1760円)より。
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今週の本棚
『出版帝国の戦争 不逞なものたちの文化史』=高榮蘭・著
2024/6/22 02:00 536文字◇『出版帝国の戦争 不逞(ふてい)なものたちの文化史』=高榮蘭(コウヨンラン)・著 (法政大学出版局・3520円) 日本植民地時代の朝鮮半島と朝鮮人の活字文化、特に日本語の文章や日本の左翼文献についての研究書。朝鮮語の識字率すら低い社会で、人々は何をどう読み、どう思考したのか。図版も豊富に使って論
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今週の本棚
『tsmc 世界を動かすヒミツ』=林宏文・著、野嶋剛・監修、牧高光里・訳
2024/6/22 02:00 515文字◇林宏文(リンホンウェン)・著、野嶋剛・監修、牧高光里・訳 (CCCメディアハウス・2970円) 半導体受託製造の世界最大手「台湾積体電路製造」(TSMC)の名前は、日本政府が巨額の補助金を出した熊本工場の開設を機に、一般にもよく知られるようになった。 TSMCがどうやってこの分野で世界最強と言わ
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彬子さまの留学記、異例のベストセラーに SNSの投稿契機に文庫化
2024/6/21 16:27 764文字三笠宮家の彬子さまが英オックスフォード大で学んだ日々を記された留学記で、4月に文庫本として出版された「赤と青のガウン」(PHP文庫)が15万部を超えるベストセラーになっている。ネット交流サービス(SNS)のある投稿がきっかけで単行本が文庫化された経緯がある。彬子さまも「なぜ今?と不思議な気持ちです
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