すいません、だいぶ時間がたってしまいましたが、ウィキリークスで暴露された外務省の
齋木昭隆氏の発言について、私なりに論評したいと思います。
読売新聞の
記事より。
>北、拉致被害者の何人か殺害…斎木発言と米報道
【ワシントン=小川聡】米紙ニューヨーク・タイムズは3日、外務省の斎木昭隆・前アジア大洋州局長(現インド大使)が「北朝鮮は、安否不明の拉致被害者の何人かを殺害していると思う」と発言したとする在日米大使館発の米政府公電を同紙ウェブサイトで公開した。
内部告発サイト「ウィキリークス」から入手したとしている。
公電は、斎木氏が局長当時の2009年9月21日付で、キャンベル米国務次官補との同18日の東京での会談を記録したもの。斎木氏は「横田めぐみさんの命運が最大の問題だ。比較的若く、世論は彼女の事件に最も同情的だからだ」と指摘したうえで、「拉致被害者の何人かは生きていると思う」と語ったとしている。
斎木氏は4日、読売新聞の取材に対し、「発言した事実は全くない」と発言そのものを否定した。そのうえで「全ての拉致被害者は生存していると強く信じており、その前提に立ってこれまでも北朝鮮側と交渉を重ねてきた」と強調した。
(2011年5月5日17時43分 読売新聞)
(引用ここまで)
個人的には特に意外でもなんでもない記事です。正直な話、日本政府が「全ての拉致被害者は生存している」なんて本気で信じているわけがないし、斎木氏も立場上記事のようなコメントをしているだけでしょう。また、真偽以前の問題として、彼が否定するのは当たり前。
で、常識的に考えてウィキリークスからすれば日本人拉致被害者の現状について日本の役人が米国政府高官に話した内容なんてどうだっていい話ですから、実際にそのような米政府公電は存在し、たぶんその内容も正しいのでしょうね。
さてさて、これって(少なくとも建前では)拉致被害者家族は激怒するような話ですが、なにか弱腰というか歯切れが悪んですね。
増元照明氏の
ブログ風活動報告より。
>2011.5.5
「ウィキリークスの漏洩問題」
(略)
結論からいえば、今回の報道に関しては否定的な思いです。
私自身、北朝鮮政権の非道さも聞いておりますし、死亡とされた拉致被害者の安否については心を痛めており、政府関係の情報担当官や報道関係者ならびに情報源との接触されている方たちに対して、「死亡説」の正否を詰問してきた経緯もあります。
その感触から、拉致被害者の死亡に関しての情報は一切ないというものです。又、外務省関係者の「死亡を前提での交渉」等、田原氏発言についても否定的な感触を持っています。
しかしながらこのような事象が生ずる遠因は、金正日が拉致を認めてから尚9年過ぎようとしている現在でも、死亡とされた8人他政府認定被害者の安否に関する交渉も、特定失踪者といわれる方々の拉致の真相も進まない状況からくる政府・被害者家族との疑心暗鬼の中で生じる問題でもあるといえます。
(後略)
ふだんあれだけさまざまな対象に横柄きわまりない態度を取っている増元氏が妙に心が広いですね。普段の彼の言動からすれば、当然激怒だと思うんですけど(爆笑)。
「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の三浦氏の
記述より。
>最初にお断りしておきますが、私は基本的にウイキリークスの情報は無視する考えでいます。これは運動家としては失格かもしれませんが、私にはウイキリークスやアサンジの姿勢は、取材ではなく、また表現の自由の問題や情報公開の問題でもなく、あえていえば情報を盗み無作為に流出させるだけの行為と考えています。外交どころか、人間個々人の約束や中小企業の取引であれ、そこには最低限必要な守秘義務があります。内輪でしかできない会話もあります。それを暴くことが真実を暴くことだとは私には思えません。そのような暴露情報を追うことが何か意義のあることとは思えず、その分の時間は私に欠如している基本的な知識、学問を身に着けるための勉強に裂きたいと思います。
(後略)
>最初にお断りしておきますが、私は基本的にウイキリークスの情報は無視する考えでいます。
それってウィキリークスの情報が、三浦さんたちにとって都合が悪いっていうことだからだろ(笑)。
>私にはウイキリークスやアサンジの姿勢は、取材ではなく、また表現の自由の問題や情報公開の問題でもなく、あえていえば情報を盗み無作為に流出させるだけの行為と考えています。
いや、そんなん関係ないじゃん。斎木氏は本当にこのような発言をしたか、そしてそうだとしたら日本政府の本音はいかにということが問題であって、
>情報を盗み無作為に流出させるだけの行為
であるかどうかなんてこの際どうでもいい話。
前にも書いたけど、たとえば北朝鮮の市場とかの盗み撮りとか、あれについて三浦氏はどうお考え? あれは北朝鮮だからかまわないの? あなた、北朝鮮の中枢から内部情報がもれたら大喜びするんじゃない?
>外交どころか、人間個々人の約束や中小企業の取引であれ、そこには最低限必要な守秘義務があります。内輪でしかできない会話もあります。それを暴くことが真実を暴くことだとは私には思えません。そのような暴露情報を追うことが何か意義のあることとは思えず
いや、ジャーナリズムってのはそのようなことを暴露することも役割の一つじゃないの? 三浦氏だって、記者クラブの発表が報道の真髄だなんて考えちゃいないでしょ(失笑)。
三浦氏はこの後外務省の北朝鮮への対応についてつらつら書いていますが、正直「あんたが書くな」という以上のものではありません。安易でまことに恐縮ですが、
bogus-simotukareさんの記事をお読みください。三浦氏の次の記述に対するbogus-simotukareさんの記述を引用します。
三浦氏
>経済制裁についても、この制裁がどのような効果を上げているか、また、何がたりないのか、そして、制裁と拉致被害者救出がどう結びつくのか、外務省なりの見解を示すことは行なってほしいと思います。
bogus-simotukareさん
>俺は「全く成果を上げてない」「拉致救出に結びつかない」と思うし、外務省もそう言う見解ではないかと思うが、そう言ったらお前ら怒り出すだろ?。そもそも経済制裁が拉致被害者救出に有効だと言って政府に実施を要求していた人間の癖に「効果が良くわからないんですがどういう効果があったのか教えてください」って何その無責任な態度。「効果がないから経済制裁やめます」と外務省が言ったら受け入れるのか?
はなから自分のお気に入りの言葉しか聞く気のないお前らに、本心など外務省が語れるわけがない。
(引用ここまで)
なお、荒木和博は、
ブログではこの件に触れていません。
ついでながらこいつのブログの
記事の
>原発と言えば、中国は1964年から1996年までに、延べ46回の核実験をウイグルにあるロプノール実験場で行いました。うち、最も危険な地表核爆発が1980年までに21回、札幌医大の高田純教授によれば核実験が直接の原因で死亡した人は推定19万人に上るとのことです。中国の核実験は北京に風が向いていないときに行っていますから、逆に言えば反対側のウルムチやトルファンでは核災害が起きることが分かった上で行ったことは明らかです。大量虐殺と言っても過言ではありません。
今、マスコミでは福島の原発被災について大騒ぎをしていますが、冷静に見ていけば福島の原発はチェルノブイリのように格納容器自体が爆発した訳でもなく、メルトダウンと言っても高線量の放射線が広範囲に拡散するわけではありません。一方でマスコミや原発問題で叫んでいる人たち、そして現総理は中国の核実験当時本気で抗議したのでしょうか。これは自分の国だから、あれは昔のことだからというだけでは言い訳にはならないと思います。
(引用ここまで)
を読んですばらしいと思いました。このようなことにもしっかり反中国の姿勢をだす。私のような凡人には(ばかばかしくて)なかなか真似できないことです。
巣食う会の
メールニュースより。気付いたけど日付が間違っていますね(2010→2011)。
>★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2010.05.06)
■ウィキリークスの漏洩された斎木局長発言について
昨日(5月5日)一部メディアが、ウィキリークスの漏洩された米国外交文書を引用し
て、一昨年9月斎木昭隆外務省アジア太平洋州局長が拉致被害者の一部は殺害されてい
ると米国務省幹部に話していた、と報じた。
それに関して、救う会では外務省に問い合わせようとしていたところ、昨日、杉山
晋輔・現アジア太平洋州局長が増元照明家族会事務局長に、現在、駐インド大使であ
る斎木氏からの伝言として「そのような話しはしていない」と伝えていたことが先ほ
どわかったので、本メールニュースでお伝えしておく。
横田めぐみさんの母・早紀江さんはTBSの取材に対して「斎木さんとは何度もお話し
しているが、このようなことは全く聞いたことがなく、本当かどうかはわからない。
私達はめぐみが元気でいると信じているし、早く助けてあげることが一番大切だと思っ
ています」とコメントしている。
救う会西岡会長も2002年9月以降、斎木氏と何回も拉致問題に関して話し合っている
が、報じられたようなことを斎木氏が話したことは一度もない。
連絡受けた増元事務局長は5月5日、自身のブログに次のように書いている。
(以下略)
>斎木氏からの伝言として「そのような話しはしていない」と伝えていたことが先ほ
どわかったので、本メールニュースでお伝えしておく。
まさか、「はい、そのような話をしました」とは斎木氏もいわないだろ。
総じて、やはり拉致関係の人たちは、この件は「なかったこと」にしたいみたいですね。ともかく外務省を追求しようという姿勢はうかがえません。常識的に考えて、斎木氏は報じられたようなことを言った可能性が高い(というかまず間違いなく言った)のでしょう。しかしそれをとがめることはあえてしない。
その理由についてはいろいろあるでしょう。以前とくらべて拉致問題についての国民の反応が悪くなっていますし(それは家族会や巣食う会の不徳のいたすところ)、外務省とケンカをすることは避けたい、外務省に貸しをつくるということもあるのでしょうが、これを追及すると藪蛇になる可能性が強いというところがあるのでしょうね。それは分かります。つまりは本音は斎木氏と共通しているってわけ(笑)。
やっぱり拉致被害者の運命については、拉致被害者家族その他関係者の皆さんすべてきわめて悲観的に考えているみたいですね。