ロシア、東欧から軍撤収要求 米欧との安保案公表
【モスクワ=石川陽平】ロシア外務省は17日、米欧との緊張緩和に向けて提案した安全保障に関する新たな合意文書の全文を公表した。北大西洋条約機構(NATO)の拡大停止に加え、東欧からの事実上の軍撤収や核兵器配備を自国内に限ることを求めた。さらに旧ソ連をロシアの勢力圏と認めるよう暗に要求した強硬な内容で、協議は困難が予想される。
米政府高官は17日、記者団に対してロシアの提案をめぐり、受け入れられない項目と協議の余地が残る項目が両方とも含まれていると説明した。欧州の同盟国と協議し、来週中にはロシアに対して米欧としての具体的な提案をすると明らかにした。
新たな安全保障案はロシアと米国の条約案と、ロシアとNATOの協定案の2つが公表された。米欧がロシアによるウクライナへの再侵攻に警戒を強める中、ロシアは15日に米国に、16日にはNATO加盟国にそれぞれ案を提示した。協議が始まれば、米欧側が求める条項を加える可能性があるとしている。
米国との条約案は全8条からなる。プーチン大統領がウクライナの加盟阻止へ求めていたNATOの東方拡大停止のほか、①バルト3国を除く旧ソ連諸国に軍事基地を設けず軍事協力も発展させない②中距離ミサイルや核兵器を自国の外に配備しない③互いを攻撃できる地域への重爆撃機や軍艦の派遣を控える――ことを盛り込んだ。
一方、NATOとの協定案は9条ある。「互いに敵として見なさない」ことを定めた上で①欧州での軍配備はNATOの東方拡大前の1997年までの状態に戻す②ウクライナや他の東欧諸国、コーカサス、中央アジアで軍事行動をしない③ロシアの国境に近い地帯で軍事演習などをしない――ことなどを求めた。
米国、NATOとの交渉を担当するリャプコフ外務次官は17日、米欧とロシアの関係について「一触即発の(危険な)状態だ」として今回の提案を無視しないよう求めた。ただちに米国とNATO双方との協議を始めたい考えも強調した。
ただ、ロシア案はNATOの東方拡大の停止をはじめ米欧には全く受け入れられない項目が多い。ロシアにはウクライナとの国境近くで軍事活動を活発にし「脅し」をかけて米欧を協議に引き出す思惑があるとみられるが、米欧がどこまで協議に応じるかは見通せない。双方がウクライナ情勢などで妥協点を見いだせるかが当面の焦点だ。
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