by David Mertl

エナジードリンクとアルコールを混ぜた飲料を青年期に飲むと脳機能が損なわれる」と題した論文が、科学誌のNeuropharmacologyに掲載されました。論文を発表したのはイギリスの研究チームで、レッドブルを用いた実験によって「エナジードリンクとアルコールを混ぜた飲料」が脳にもたらす影響が確かめられています。

Mixing energy drinks and alcohol during adolescence impairs brain function: A study of rat hippocampal plasticity - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S002839082400162X

研究チームは「水」「20%エタノール水溶液」「エナジードリンク」「20%エタノール水溶液とエナジードリンクの混合液」のいずれかを生後28日〜37日のラットに投与し、投与後の行動学的変化や生理学的変化を分析しました。各溶液は生後28日、29日、32日、33日、36日、37日の6回投与され、1回ごとに体重1kg当たり10mlが経口投与されました。



ラットの生後28日〜37日は人間の青年期に相当します。また、ラットに投与したエタノールとエナジードリンクの量は、70kgの人間に換算すると「1.5〜2杯の飲酒(エタノール12g)」「エナジードリンク2缶」に相当します。なお、実験用のエナジードリンクにはレッドブルが採用されました。

各溶液の投与が完了した後、生後40日〜45日、60日〜65日、90日〜95日のいずれかの時期まで育成し、以下の分析を行いました。

・自発的な運動活動の時間の測定

・物体探索にかかる時間の測定

・モリス水迷路を用いた学習・記憶・行動柔軟性のテスト

・脳組織を電気生理学的手法で分析

・脳における主要な神経栄養因子「脳由来神経栄養因子(BDNF)」を産生するmRNAの発現量測定

・神経回路の正常な発達に関係するBDNFとTrkBの量を測定



分析の結果、「20%エタノール水溶液とエナジードリンクの混合液」を飲ませたグループで「成人期まで続く行動障害」「シナプス可塑性の低下」「BDNFとTrkBの量の変化」が確認されました。これらの結果は、「20%エタノール水溶液」や「エナジードリンク」を単体で投与した場合とは異なるものだったとのこと。この結果をもとに、研究チームは「青年期にエナジードリンクとアルコールを混ぜた飲料を飲むと、シナプス可塑性に永続的な影響を及ぼす可能性がある」と結論付けています。

なお、エナジードリンクとアルコールを混ぜて飲む行為については、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)が「飲酒量が増え、アルコールの影響が強まり、アルコール関連の健康被害や早期死亡につながる可能性がある」として控えるように警告しています。また、農林水産省も「エナジードリンクとアルコールを混ぜて飲むと、エナジードリンク中のカフェインがアルコールによる機能低下を隠してしまうため、思った以上に飲んでしまう可能性があります」として、同行為を控えるように注意喚起しています。

カフェインの過剰摂取について:農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html