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統合幕僚長

日本の防衛省の統合幕僚監部の長であり、自衛官の最高位者

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統合幕僚長(とうごうばくりょうちょう、: Chief of Staff, Joint Staff)は、統合幕僚監部の長であり、自衛官の最高位者[1]。階級は陸将、海将または空将のいずれか[2]で、陸上幕僚長海上幕僚長または航空幕僚長の中から持ち回りで選出されるが、元の陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長と兼任せず、それらの後任として任命される。警察庁長官及び各省事務次官と同等の政令指定職8号。

日本の旗 日本
統合幕僚長
Chief of Staff, Joint Staff
統合幕僚長旗
現職者
陸将山崎幸二(第6代)

就任日 2019年(平成31年)4月1日
組織行政府
防衛省
種類自衛官
所属機関統合幕僚監部
任命防衛大臣
初代就任先崎一
(第26代統合幕僚会議議長)
創設2006年(平成18年)3月27日
ウェブサイト防衛省・自衛隊

概要

外国軍における統合参謀総長に相当し、外国軍との統合軍司令官の役割も併せ持ち、陸海空の自衛隊の運用に関し一元的に防衛大臣を補佐し、統合幕僚監部の所掌事務に係る大臣の指揮命令は、全て統合幕僚長を通じて行う(統合幕僚監部の所掌事務に係らないものは、従来通り、陸海空各幕僚長を通じて行う)[3]有事の際には、フォースプロバイダー(練度管理責任者)の陸上幕僚長海上幕僚長航空幕僚長から提供された各部隊を、自衛官最高位のフォースユーザー(事態対処責任者)として運用し、陸自の陸上総隊司令官方面総監、海自の自衛艦隊司令官地方総監、空自の航空総隊司令官に大臣の命令を執行することになる[4][5][6]。法形式上は、防衛大臣が指揮命令をし、統合幕僚長は大臣の補佐及び命令の執行をするが、実質上は統合幕僚長の指揮と言える[7]。また、統合幕僚長は職務を行うにあたり、陸海空各幕僚長に対し、必要な措置をとらせることができる[4]

階級章は、陸海空各幕僚長たる将と同じ4つ星[注 1]で、旧軍や諸外国軍における大将相当官とされ、左胸(ポケット)には統合幕僚長の身分を示す統合幕僚長章を着用する[8]。この統合幕僚長章はかつては統合幕僚会議議長章であり、1962年(昭和37年)12月1日に4つ星が制定された際、陸海空各幕僚長が左胸に着けていた幕僚長の身分を示す幕僚長章が廃止されたのに対し、本章は初代統幕議長以来、連綿と受け継がれている。

統合幕僚監部の設立までは、統合幕僚会議の長として統合幕僚会議議長(とうごう-ばくりょう-かいぎ-ぎちょう)、略して統幕議長(とうばくぎちょう)が置かれていた。

三自衛隊の統合運用の重要性が増してきたことを受けて、2006年(平成18年)3月27日に「統合幕僚会議」および「同事務局」が「統合幕僚監部」に改編され、統合幕僚会議議長も統合幕僚長となった。それまでは陸・海・空の各自衛隊ごとの運用が基本とされ、統合幕僚会議議長は主に三自衛隊の調整役としての役割をもち、部隊指揮においては陸・海・空の2つ以上の自衛隊が統合部隊を編制したときにのみそれを担っていたが、統合幕僚長への変更に伴って三自衛隊の統合運用が基本となり、常時三自衛隊を統合運用する最高のフォースユーザーとしての立場が明確化された[6][9]。最後の統合幕僚会議議長は、2004年(平成16年)8月30日に就任した先崎一陸将である。なお、統合幕僚長・統合幕僚会議議長ともに自衛官の最上位であるため、退任すなわち退官となる。退官に際しては、皇居への参内と園遊会への招待を受けることが慣例となっている。

  • 防衛大臣からの指揮監督系統[5]
部隊運用
 
 
防衛大臣
 
 
 
 
 
 
統合幕僚長
 
 
 
 
 
 
 
部隊運用以外
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
陸海空各幕僚長
 
 
 
 
 
 
 
統合任務部隊指揮官
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
陸上総隊司令官等
 
 
 
 
 
 
 
 
 
自衛艦隊司令官等
 
 
 
 
 
 
 
 
 
航空総隊司令官等
 
 
 
 
統合幕僚長の権限[4][10][5][3]
統合幕僚長 陸海空各幕僚長
防衛大臣の補佐 自衛隊の運用に関して軍事専門的観点
からの補佐を一元的に行う
各自衛隊の隊務(運用を除く)に関する
専門的助言を行う
部隊への権限 フォースユーザー フォースプロバイダー
対象となる部隊 3自衛隊・共同の部隊統合任務部隊 各自衛隊

統合司令官ポスト新設による統合幕僚長の職務変更の検討

近年、統合幕僚長は、アメリカで言うと文民の最高司令官である大統領国防長官の最高軍事補佐機関であるスタッフとしての統合参謀本部議長の職務と、最高司令官の命令を武官として最高の立場で指揮するラインとしての統合軍司令官の機能を併存させているため、大規模災害や有事の際に、内閣総理大臣防衛大臣への補佐と各部隊への指揮という2つの任務に忙殺され対応できない可能性も指摘されている。そこで統合幕僚監部から隷下の運用部を切り離すなどして、新たに統合幕僚監部とは別の常設の「統合司令部」を創設して「統合司令官」のポストを新設して部隊運用に専念させ、統合幕僚長を大臣補佐に専念させる構想がもちあがっている[11][12][13]

2022年6月6日、中国の積極的な海洋進出により台湾有事の可能性が高まってきている事、宇宙・サイバー・電磁波などの安全保障の新領域へ対応するために、新たに統合司令部を創設して新設するポストの統合司令官を部隊運用に専念させることへの本格的な検討に入ったと報じられた[14]

定年

陸将・海将・空将たる自衛官は60歳を以て定年退官となるが、統合幕僚長たる陸将、海将、または空将の定年は62歳となっている[15]。陸将・海将・空将の定年を超えて統合幕僚長の職位にある自衛官が統合幕僚長の職務を辞任したり、解任された場合はその時点で定年に達したものと見做され自動的に定年退官となる。

叙勲

日本の叙勲制度では70歳以上が授与対象者となっており、従来は原則として統合幕僚会議議長経験者には瑞宝重光章(旧勲二等瑞宝章)が授与されていたが、内閣総理大臣安倍晋三の「高い士気と誇りを持って任務を遂行できるようにしなければならない。今後も自衛隊員に対し、任務にふさわしい名誉や処遇が与えられるよう不断に検討する」との方針で、2014年から統合幕僚長(旧統合幕僚会議議長)経験者には70歳に達した後に瑞宝大綬章(旧勲一等瑞宝章)が授与されるようになった[16]

歴代の統合幕僚会議議長及び統合幕僚長

歴代の統合幕僚会議議長及び統合幕僚長(たる自衛官)
写真 階級 氏名 在任期間 出身校・期 前職 備考
統合幕僚会議議長
1   陸将 林敬三 1954.07.01 - 1964.08.13 東京帝国大学 第一幕僚長 内務官僚出身
2   海将 杉江一三 1964.08.14 - 1966.04.29 海兵56期・
海大37期
海上幕僚長
3   陸将 天野良英 1966.04.30 - 1967.11.14 陸士43期・
陸大52期
陸上幕僚長
4   空将 牟田弘國 1967.11.15 - 1969.06.30 陸士43期 航空幕僚長
5   海将 板谷隆一 1969.07.01 - 1971.06.30 海兵60期 海上幕僚長
6   陸将 衣笠駿雄 1971.07.01 - 1973.01.31 陸士48期・
陸大55期
陸上幕僚長
7   陸将 中村龍平 1973.02.01 - 1974.06.30 陸士49期・
陸大56期
8   空将 白川元春 1974.07.01 - 1976.03.15 陸航士51期・
陸大58期
航空幕僚長
9   海将 鮫島博一 1976.03.16 - 1977.10.19 海兵66期 海上幕僚長
10   陸将 栗栖弘臣 1977.10.20 - 1978.07.27 東京帝国大学 陸上幕僚長 超法規発言[注 2]で辞任
11   陸将 高品武彦 1978.07.28 - 1979.07.31 陸士54期
12   空将 竹田五郎 1979.08.01 - 1981.02.15 陸航士55期 航空幕僚長
13   海将 矢田次夫 1981.02.16 - 1983.03.15 海兵72期 海上幕僚長
14   陸将 村井澄夫 1983.03.16 - 1984.06.30 陸士58期 陸上幕僚長
15   陸将 渡部敬太郎 1984.07.01 - 1986.02.05 陸士60期
16   空将 森繁弘 1986.02.06 - 1987.12.10 陸航士60期 航空幕僚長
17   陸将 石井政雄 1987.12.11 - 1990.03.15 立教大学 陸上幕僚長
18   陸将 寺島泰三 1990.03.16 - 1991.06.30 東北大学
19   海将 佐久間一 1991.07.01 - 1993.06.30 防大01期 海上幕僚長
20   陸将 西元徹也 1993.07.01 - 1996.03.24 防大03期 陸上幕僚長 後に防衛大臣補佐官
(後の防衛大臣政策参与)
21   空将 杉山蕃 1996.03.25 - 1997.10.12 防大04期 航空幕僚長
22   海将 夏川和也 1997.10.13 - 1999.03.30 防大06期 海上幕僚長
23   陸将 藤縄祐爾 1999.03.31 - 2001.03.26 防大08期 陸上幕僚長
24   空将 竹河内捷次 2001.03.27 - 2003.01.27 防大09期 航空幕僚長 退任後、防衛省顧問
25   海将 石川亨 2003.01.28 - 2004.08.29 防大11期 海上幕僚長
  陸将 先崎一 2004.08.30 - 2006.03.26 防大12期 陸上幕僚長 初代統合幕僚長へ
統合幕僚長
1   陸将 先崎一 2006.03.27 - 2006.08.03 防大12期 統合幕僚会議議長 定年延長(3ケ月)
退任後、JMAS会長
2   海将 齋藤隆 2006.08.04 - 2009.03.23 防大14期 海上幕僚長 退任後、防衛省顧問
3   陸将 折木良一 2009.03.24 - 2012.01.30 防大16期 陸上幕僚長 退任後、防衛大臣補佐官
(後の防衛大臣政策参与)
4   空将 岩崎茂 2012.01.31 - 2014.10.13 防大19期 航空幕僚長 退任後、防衛大臣政策参与
5   海将 河野克俊 2014.10.14 - 2019.3.31 防大21期 海上幕僚長 定年延長(3回:2年6ケ月)
退任後、防衛省顧問
6   陸将 山崎幸二 2019.4.1 - 防大27期 陸上幕僚長

脚注

注釈

  1. ^ 1962年(昭和37年)12月1日、自衛隊法の一部改正により現在の階級章が制定された。それ以前は他の将と同じ階級章であった。
  2. ^ 曰く「現行の自衛隊法には穴があり、奇襲侵略を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで動けない。 第一線部隊指揮官が(発令を待たずに動く)超法規的行動に出ることはあり得る」。

出典

  1. ^ 防衛省設置法 第21条
  2. ^ 防衛省組織令 第53条
  3. ^ a b 防衛省 (2009年). “防衛大臣を補佐する体制/2009年防衛白書”. 2020年11月21日閲覧。
  4. ^ a b c 自衛隊法 第8条、第9条及び第9条の2
  5. ^ a b c 防衛省 (2010年). “統合運用体制の概要/2012年防衛白書”. 2020年11月21日閲覧。
  6. ^ a b 統合運用について 防衛省 2010年3月
  7. ^ 福好昌治「陸海空自衛隊の統合運用 『統合幕僚長』の権限と責任」『軍事研究』、株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー、2018年1月、82-94頁、ISSN 0533-6716 
  8. ^ 統合幕僚長章に関する訓令
  9. ^ 統合幕僚会議 コトバンク
  10. ^ 防衛省設置法 第22条
  11. ^   「統合司令部」常設を検討 自衛隊トップが言及 産経ニュース 2016年3月1日
  12. ^ 参議院会議録情報 第193回国会 外交防衛委員会 第20号 平成29年5月23日
  13. ^ “統合司令部を創設 防衛省、最終調整へ 自衛隊を常時・一元指揮”. 産経新聞. (2018年4月25日). https://www.sankei.com/article/20180425-7F4G4VVMTRMWVJ3KH2J5T6VIUM/ 2022年6月7日閲覧。 
  14. ^ “自衛隊「統合司令官」、本格検討 台湾有事懸念、部隊運用に機動性”. 共同通信 (Yahoo!ニュース). (2022年6月6日). オリジナルの2022年6月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220606144217/https://news.yahoo.co.jp/articles/8f6b6faf035b69243f834cd040c7f5e32c138eff 2022年6月7日閲覧。 
  15. ^ 自衛隊法施行令第60条及び別表第9
  16. ^ 元統幕議長への瑞宝大綬章は首相指示 産経ニュース 2014年7月15日

関連項目

外部リンク