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[[立方晶系]]の[[結晶構造]]を持つ、灰色の金属粉末である。[[耐食性]]が高い。[[第4族元素|第4族]][[遷移元素|遷移金属]][[炭化物|侵入型炭化物]]であり、{{仮リンク|超高温セラミック|en|Ultra_high_temperature_ceramics}} (UHTC) に分類される。[[金属結合]]が存在するため、[[熱伝導率]]は {{Val|20.5|u=W/m·K}} および[[電気抵抗率]]は {{Val|43|u=μΩ·cm|p=~}} と、金属[[ジルコニウム]]に近い値を示す。Zr-C間の強力な[[共有結合]]のため、非常に高い融点 ({{Val|3530|ul=degC|p=~}}) および[[弾性率]] ({{Val|440|ul=GPa|p=~}})、[[硬さ|硬度]] ({{Val|25|u=GPa}}) を示す。ZrCの[[密度]]は{{Val|6.73|ul=g/cm3}} と、[[炭化タングステン|WC]] ({{Val|15.8|u=g/cm3}}) や [[炭化タンタル|TaC]] ({{Val|14.5|u=g/cm3}})、[[炭化ハフニウム|HfC]] ({{Val|12.67|u=g/cm3}}) などといった他の炭化物に比べて低い。その低い密度と耐熱性から、これらの性質が重要となる[[大気圏再突入|大気圏突入]]機や[[ロケットエンジン|ロケット]]・[[スクラムジェットエンジン]]、[[超音速機]]に適していると考えられる{{要出典|date=May 2012}}。 |
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[[耐火金属]]の炭化物のほとんどと同様、炭化ジルコニウムは準[[化学量論]]的化合物であり、炭素欠陥を含む。およそ {{Chem|Zr|C|0.98}} を超える炭素含有率を有する材料は、[[遊離]]炭素を含む<ref name="baker"/>。{{Chem|Zr|C}}は0.65から0.98の炭素・金属比範囲で安定である。 |
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炭化ジルコニウムと[[炭化タンタル]]の[[混合物]]は、[[サーメット]]材料として重要である{{要出典|date=May 2012}}。 |
炭化ジルコニウムと[[炭化タンタル]]の[[混合物]]は、[[サーメット]]材料として重要である{{要出典|date=May 2012}}。 |
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[[ハフニウム]]を含まない炭化ジルコニウムおよび[[炭化ニオブ]]は、[[原子炉]]における耐火被覆材として応用可能である。[[中性子]][[反応断面積|吸収断面積]]が低く、放射線照射下における損傷感受性が低いため、[[核燃料]]の[[酸化ウラン(IV)|酸化ウラン]]および[[酸化トリウム(IV)|酸化トリウム]]の被覆材としての用途ある。{{仮リンク|流動床反応器|en|Fluidized_bed_reactor}}内で[[熱CVD]]により被覆を行うことが多い。また、高温において放射率および電流容量が高いため、[[熱光起電力|熱光発電]]デバイスにおけるラジエータや[[電界放出]]エミッタチップ材料としても有望である{{要出典|date=May 2012}}。 |
[[ハフニウム]]を含まない炭化ジルコニウムおよび[[炭化ニオブ]]は、[[原子炉]]における耐火被覆材として応用可能である。[[中性子]][[反応断面積|吸収断面積]]が低く、[[放射線]]照射下における損傷感受性が低いため、[[核燃料]]の[[酸化ウラン(IV)|酸化ウラン]]および[[酸化トリウム(IV)|酸化トリウム]]の[[燃料被覆管|被覆材]]としての用途がある。また、[[超高温原子炉|超高温ガス炉]]用燃料粒子の被覆材料としての研究が行われている<ref>沢和弘, 植田祥平, 相原純 ほか、「[https://doi.org/10.3327/taesj.J06.038 超高温ガス炉用セラミック被覆燃料開発]」『日本原子力学会和文論文誌』 2007年 6巻 2号 p.113-125, {{doi|10.3327/taesj.J06.038}}, 日本原子力学会</ref>。 |
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{{仮リンク|流動床反応器|en|Fluidized_bed_reactor}}内で[[熱CVD]]により被覆を行うことが多い。また、高温において[[放射率]]および電流容量が高いため、[[熱光起電力|熱光発電]]デバイスにおけるラジエータや[[電界放出]]エミッタチップ材料としても有望である{{要出典|date=May 2012}}。 |
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[[研磨材]]、{{仮リンク|クラッディング|en|Cladding_(metalworking)}}、[[サーメット]]、[[白熱電球|白熱フィラメント]]、切削工具などにも用いられる{{要出典|date=May 2012}}。 |
[[研磨材]]、{{仮リンク|クラッディング|en|Cladding_(metalworking)}}、[[サーメット]]、[[白熱電球|白熱フィラメント]]、切削工具などにも用いられる{{要出典|date=May 2012}}。 |
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*[[ジルコニア]]({{chem|ZrO|2}}) と[[グラファイト]]の混合物を、[[アルゴン]]ガス(Ar) または Ar-{{chem|H|2}} 混合ガスのプラズマジェットにより高温加熱することにより得る<ref>Matsumoto, O. and T. Miyazaki: Denki-Kaguaku, 39, [5], 388 (1971)</ref><ref name="sptj.23.665">山根健二,木田伸一,森利之 ほか、「[[doi:10.4164/sptj.23.665|マグネシウム還元法によるジルコニアからの炭化ジルコニウム超微粉体の合成]]」『粉体工学会誌』 1986年 23巻 9号 p.665-670, {{doi|10.4164/sptj.23.665}}, 粉体工学会</ref>。 |
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*{{Val|900|-|1500|u=degC}} に加熱したアルミナ管内の[[ムライト]]管に、[[塩化ジルコニウム(IV)]] の蒸気、[[メタン]]ガス({{chem|CH|4}})、[[水素]]ガス({{chem|H|2}}) を均一に混合した気体を流通させることにより、ムライト管を基材として {{Chem|Zr|C}} を析出させる<ref>{{Cite journal|和書|last=加藤 |first=昭夫 |last2=玉利 |first2=信幸 |date=1977-05-10|title=気相反応法による炭化ジルコニウムの結晶成長|url=https://doi.org/10.1246/nikkashi.1977.650 |journal=日本化学会誌(化学と工業化学) |volume=1977 |issue=5 |pages=650–655 |language=ja |doi=10.1246/nikkashi.1977.650 |issn=0369-4577 |publisher=日本化学会}}</ref><ref name="sptj.23.665" />。 |
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* マグネシウム還元法<ref name=sptj.23.665 /> |
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:<chem>ZrO2(s) + 2Mg(s,l) + CH4(g) ->[{1000℃}] ZrC(s) + 2MgO(s) + 2H2(g)</chem> |
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⚫ | また、粉末 {{Chem|Zr|C}} を {{Val|2000|u=degC}} 以上で焼結させることにより緻密化 ZrC が製造される。ZrCをホットプレスすることにより焼結温度を下げると同時にきめ細かい完全緻密化 {{Chem|Zr|C}} を製造することができる。放電プラズマ焼結による完全緻密化 {{Chem|Zr|C}} の製造も行われている<ref>{{Cite journal|last=Wei|first=Xialu|last2=Back|first2=Christina|last3=Izhvanov|first3=Oleg|last4=Haines|first4=Christopher|last5=Olevsky|first5=Eugene|year=2016|title=Zirconium Carbide Produced by Spark Plasma Sintering and Hot Pressing: Densification Kinetics, Grain Growth, and Thermal Properties|journal=Materials|volume=9|issue=7|pages=577|bibcode=2016Mate....9..577W|doi=10.3390/ma9070577|pmid=28773697|pmc=5456903}}</ref>。 |
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== 複合材 == |
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{{Val|800|u=degC}} 以上での[[酸化]]耐性の低さにより、{{Chem|Zr|C}} の応用範囲は制限される。酸化耐性を高める一つの方法は、[[複合材料|複合材]]の製造である。提案されている複合材の中でも、{{Chem|Zr|C}}-{{Chem|Zr|B|2}} や {{Chem|Zr|C}}-{{Chem|Zr|B|2}}-{{chem|Si|C}} が重要である。これらの複合材は {{Val|1800|u=degC}} までの温度での使用に耐える{{要出典|date=May 2012}}。 |
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== 出典 == |
== 出典 == |
2020年5月10日 (日) 09:14時点における最新版
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炭化ジルコニウム | |
---|---|
別称 炭化ジルコニウム (I) | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 12070-14-3 |
PubChem | 11159298 |
EC番号 | 235-125-1 |
国連/北米番号 | 3178 |
RTECS番号 | ZH7155000 |
特性 | |
化学式 | CZr |
モル質量 | 103.23 g mol−1 |
外観 | 灰色耐火性固体 |
匂い | 無臭 |
密度 | 6.73 g/cm3 (24 °C)[1] |
融点 | |
沸点 |
5100 °C, 5373 K, 9212 °F [2] |
水への溶解度 | 不溶 |
溶解度 | 濃硫酸、フッ酸[1]、硝酸に可溶 |
構造 | |
結晶構造 | 立方晶系、 cF8[3] |
空間群 | Fm3m, No. 225[3] |
格子定数 (a, b, c) | a = 4.6976(4) Å[3] Å |
格子定数 (α, β, γ) | α = 90°, β = 90°, γ = 90° |
配位構造 | 八面体型[3] |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
−207 kJ/mol(量論比における外挿値)[4] −196.65 kJ/mol[5] |
標準モルエントロピー S |
33.14 J/mol·K[5] |
標準定圧モル比熱, Cp |
37.442 J/mol·K[5] |
危険性 | |
GHSピクトグラム | |
GHSシグナルワード | 危険(DANGER) |
Hフレーズ | H228, H302, H312, H332[6] |
Pフレーズ | P210, P280[6] |
主な危険性 | 発火性 |
NFPA 704 | |
関連する物質 | |
その他の陰イオン | 窒化ジルコニウム 二酸化ジルコニウム |
その他の陽イオン | 炭化チタン 炭化ハフニウム 炭化バナジウム 炭化ニオブ 炭化タンタル 炭化クロム 炭化モリブデン 炭化タングステン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
炭化ジルコニウム(たんかジルコニウム、ZrC)は非常に硬い、耐火性のセラミック材料である。商業的には、切削工具のバイトに使用される。通常は焼結により加工される。
物性[編集]
ZrC の熱膨張係数[2] | |
---|---|
T | αV |
100 °C | 0.141 |
200 °C | 0.326 |
400 °C | 0.711 |
800 °C | 1.509 |
1200 °C | 2.344 |
立方晶系の結晶構造を持つ、灰色の金属粉末である。耐食性が高い。第4族遷移金属侵入型炭化物であり、超高温セラミック (UHTC) に分類される。金属結合が存在するため、熱伝導率は 20.5 W/m·K および電気抵抗率は ~43 μΩ·cm と、金属ジルコニウムに近い値を示す。Zr-C間の強力な共有結合のため、非常に高い融点 (~3530 °C) および弾性率 (~440 GPa)、硬度 (25 GPa) を示す。ZrCの密度は6.73 g/cm3 と、WC (15.8 g/cm3) や TaC (14.5 g/cm3)、HfC (12.67 g/cm3) などといった他の炭化物に比べて低い。その低い密度と耐熱性から、これらの性質が重要となる大気圏突入機やロケット・スクラムジェットエンジン、超音速機に適していると考えられる[要出典]。
耐火金属の炭化物のほとんどと同様、炭化ジルコニウムは準化学量論的化合物であり、炭素欠陥を含む。およそ ZrC0.98 を超える炭素含有率を有する材料は、遊離炭素を含む[4]。ZrCは0.65から0.98の炭素・金属比範囲で安定である。
TiC、ZrC、SiCは実用上強酸性溶液 (HCl) および強塩基性溶液 (NaOH) に対して100 °C においてさえ不活性であるが、ZrC は HF とは反応する。
炭化ジルコニウムと炭化タンタルの混合物は、サーメット材料として重要である[要出典]。
応用[編集]
ハフニウムを含まない炭化ジルコニウムおよび炭化ニオブは、原子炉における耐火被覆材として応用可能である。中性子吸収断面積が低く、放射線照射下における損傷感受性が低いため、核燃料の酸化ウランおよび酸化トリウムの被覆材としての用途がある。また、超高温ガス炉用燃料粒子の被覆材料としての研究が行われている[7]。
流動床反応器内で熱CVDにより被覆を行うことが多い。また、高温において放射率および電流容量が高いため、熱光発電デバイスにおけるラジエータや電界放出エミッタチップ材料としても有望である[要出典]。
研磨材、クラッディング、サーメット、白熱フィラメント、切削工具などにも用いられる[要出典]。
製造法[編集]
以下に示すようないくつかの方法がある。
- 900–1500 °C に加熱したアルミナ管内のムライト管に、塩化ジルコニウム(IV) の蒸気、メタンガス(CH4)、水素ガス(H2) を均一に混合した気体を流通させることにより、ムライト管を基材として ZrC を析出させる[10][9]。
- マグネシウム還元法[9]
また、粉末 ZrC を 2000 °C 以上で焼結させることにより緻密化 ZrC が製造される。ZrCをホットプレスすることにより焼結温度を下げると同時にきめ細かい完全緻密化 ZrC を製造することができる。放電プラズマ焼結による完全緻密化 ZrC の製造も行われている[11]。
複合材[編集]
800 °C 以上での酸化耐性の低さにより、ZrC の応用範囲は制限される。酸化耐性を高める一つの方法は、複合材の製造である。提案されている複合材の中でも、ZrC-ZrB2 や ZrC-ZrB2-SiC が重要である。これらの複合材は 1800 °C までの温度での使用に耐える[要出典]。
出典[編集]
- ^ a b c Lide, David R., ed (2009). CRC Handbook of Chemistry and Physics (90th ed.). Boca Raton, Florida: CRC Press. ISBN 978-1-4200-9084-0
- ^ a b c Perry, Dale L. (2011). Handbook of Inorganic Compounds (2nd ed.). CRC Press. p. 472. ISBN 978-1-4398-1461-1
- ^ a b c d Kempter, C. P.; Fries, R. J. (1960). “Crystallographic Data. 189. Zirconium Carbide”. Analytical Chemistry 32 (4): 570. doi:10.1021/ac60160a042.
- ^ a b Baker, F. B.; Storms, E. K.; Holley, C. E. (1969). “Enthalpy of formation of zirconium carbide”. Journal of Chemical & Engineering Data 14 (2): 244. doi:10.1021/je60041a034.
- ^ a b c Zirconium carbide in Linstrom, P.J.; Mallard, W.G. (eds.) NIST Chemistry WebBook, NIST Standard Reference Database Number 69. National Institute of Standards and Technology, Gaithersburg MD. http://webbook.nist.gov (retrieved 2014-06-30)
- ^ a b c Sigma-Aldrich Co., Zirconium(IV) carbide. 2014年6月30日閲覧。
- ^ 沢和弘, 植田祥平, 相原純 ほか、「超高温ガス炉用セラミック被覆燃料開発」『日本原子力学会和文論文誌』 2007年 6巻 2号 p.113-125, doi:10.3327/taesj.J06.038, 日本原子力学会
- ^ Matsumoto, O. and T. Miyazaki: Denki-Kaguaku, 39, [5], 388 (1971)
- ^ a b c 山根健二,木田伸一,森利之 ほか、「マグネシウム還元法によるジルコニアからの炭化ジルコニウム超微粉体の合成」『粉体工学会誌』 1986年 23巻 9号 p.665-670, doi:10.4164/sptj.23.665, 粉体工学会
- ^ 加藤, 昭夫、玉利, 信幸「気相反応法による炭化ジルコニウムの結晶成長」『日本化学会誌(化学と工業化学)』第1977巻第5号、日本化学会、1977年5月10日、650–655頁、doi:10.1246/nikkashi.1977.650、ISSN 0369-4577。
- ^ Wei, Xialu; Back, Christina; Izhvanov, Oleg; Haines, Christopher; Olevsky, Eugene (2016). “Zirconium Carbide Produced by Spark Plasma Sintering and Hot Pressing: Densification Kinetics, Grain Growth, and Thermal Properties”. Materials 9 (7): 577. Bibcode: 2016Mate....9..577W. doi:10.3390/ma9070577. PMC 5456903. PMID 28773697 .