(Go: >> BACK << -|- >> HOME <<)

コンテンツにスキップ

「分隊支援火器」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Gokijet (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
m編集の要約なし
 
(11人の利用者による、間の18版が非表示)
1行目: 1行目:
[[ファイル:Improved M249 Machine Gun.jpg|thumb|300px|[[M249軽機関銃]]。アメリカ陸軍の分隊支援火器計画で調達された。]]
{{出典の明記|date=2018年3月}}
'''分隊支援火器'''(ぶんたいしえんかき、{{Lang-en|Squad automatic weapon, SAW}})は、[[機関銃]]を軽量小型にして、[[歩兵]]用[[小銃]]の[[弾薬]]や部品が共用でき、[[兵士]]が1人で運用できるようにしたもの<ref name=kotobank>{{Cite Kotobank|銃|encyclopedia=日本大百科全書(ニッポニカ)|accessdate=2021-05-18}}</ref>。[[軽機関銃]]の別称としても扱われるほか<ref>{{Cite web|date=19 May 2020|title=Machine gun|url=https://www.britannica.com/technology/machine-gun|publisher=[[ブリタニカ百科事典]]|lang=en|accessdate=2021-05-18}}</ref>、'''軽支援火器'''({{Lang-en-short|Light Support Weapon, LSW}})と称されることもある{{Sfn|床井|2006|pp=6-7}}。
{{Multiple image
|direction=vertical
|width=300
|image1=Integrated Task Force Marines drive home M27 IAR 101 141203-M-DU612-015.jpg
|caption1=[[M27 IAR]](発展型の軽機関銃)
|image2=Latvian Army soldier (17253859982).jpg
|caption2=[[ミニミ軽機関銃]] (専用設計型の軽機関銃)
|image3=Machine gun M60E6.JPG
|caption3=[[M60機関銃]](汎用機関銃)
|image4=Kulspruta 58B 001.jpg
|caption4=[[FN MAG]](汎用機関銃)
}}
'''分隊支援火器'''({{lang-en-short|Squad Automatic Weapon, SAW}})もしくは'''軽支援火器'''({{Lang-en-short|Light Support Weapon, LSW}})は、[[分隊]]を[[火力支援]]するために容易に携行することが可能な[[機関銃]]である。


なお分隊支援火器という呼称は武器の使用区分を表しており、武器としての区分は機関銃である{{Sfn|McNab|2020|pp=47-52}}。
[[小銃]]弾以上の[[弾丸|銃弾]]を使用する[[軽機関銃]]を指すことが多いが、[[汎用機関銃]]を分隊支援に使用する国も存在し定義は国によって異なる。

通常、1個[[歩兵]]分隊または1個歩兵[[小隊]]に1-2丁配備される。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[第二次世界大戦]]後、[[西側諸国]]では歩兵[[分隊]]の銃器を[[自動小銃]]と[[汎用機関銃]]に統合化し、軽機関銃は廃止される方向にあったのに対し{{Sfn|床井|2006|pp=8-16}}、[[東側諸国]]では、汎用機関銃は中隊レベルの装備とされて{{Sfn|床井|2006|pp=18-21}}、これとは別に分隊レベルのための軽機関銃も維持していた{{Sfn|床井|2006|pp=8-16}}。また歩兵用小銃とあわせて分隊用の軽機関銃も[[中間弾薬]]に移行しており{{Sfn|McNab|2020|pp=2-10}}、[[1953年]]に[[RPD軽機関銃]]を導入したのち、[[1961年]]からは、[[AK-47#AKM|AKM小銃]]をもとに開発された[[RPK軽機関銃]]に移行した{{Sfn|Rottman|2018|pp=66-71}}。
分隊支援火器の基本的な運用法は、行軍時の野戦において[[弾幕]]を張ることで敵[[歩兵]]に頭を上げさせない[[制圧射撃|火力制圧]]を行うものである。この援護射撃によって敵の攻撃行動を抑制し、味方の攻撃の自由度を確保する。また、敵の強襲に対する防御に使うこともできる。


[[ベトナム戦争]]において、東側の武器体系を採用する[[ベトナム人民軍]]は分隊用の軽機関銃を装備していたのに対し、[[アメリカ軍]]は汎用機関銃である[[M60機関銃]]のみを装備していた{{Sfn|床井|2006|pp=18-21}}。しかし特に徒歩行軍の機会が多い[[熱帯雨林]]や[[山地|山岳地域]]での戦闘において、機関銃本体も弾薬も重く嵩張るM60は輸送のために労力を要し、決定的に不利であった{{Sfn|McNab|2020|pp=182-184}}。この経験から、アメリカ軍でも軽機関銃の重要性が再認識されるようになった{{Sfn|床井|2006|pp=18-21}}。
分隊支援火器は基本的に1人で携行できるほど軽量で、戦闘部隊への補給の単純化・効率化を考慮して、[[弾薬]]はアサルトライフルと共通のものを使用する。[[汎用機関銃]]、または[[重機関銃]]は、その重量ゆえに攻勢に伴う移動にあまり適さず、[[三脚]]を用いて陣地の守備に用いられることが多いが、分隊支援火器は部隊移動を伴う野戦において[[二脚|二脚(バイポッド)]]を展開して使用されることが多い。分隊支援火器は陣地防御のような用途には向かず、そのような使い方は設計・運用思想とも合わない。


[[1960年代]]末より、[[アメリカ陸軍]]は歩兵部隊が持つ火力のタイプと組み合わせに関する研究に着手していたが、これらの戦訓を踏まえて「戦術的多様性を達成するため、小銃分隊の各射撃班に1名ずつ、計2名の機関銃手が必要である」との結論に達した{{Sfn|McNab|2020|pp=26-31}}。これを受けて[[1972年]]には新型機関銃の要求事項が提示され、計画名は'''分隊支援火器'''(SAW)とされた{{Sfn|McNab|2020|pp=26-31}}。競争試作を経て[[1979年]]より比較試験が行われ、[[M16自動小銃]]の軽機関銃版(XM106)や[[H&K HK21]]の改良型(XM262)を抑えて、[[ミニミ軽機関銃]]が[[M249軽機関銃]]として採用された{{Sfn|McNab|2020|pp=26-31}}。
分隊支援火器は[[ミニミ軽機関銃]]、[[CIS ウルティマックス100軽機関銃|ウルティマックス100]]など最初から個人携行用の軽機関銃として設計されている'''専用設計型'''と、[[ロシア]]([[ソビエト連邦|ソ連]])の[[RPK軽機関銃]]や[[イギリス]]の[[L85#SA80シリーズ|L86]]など[[アサルトライフル]]を連続射撃に耐えられるように[[銃砲身|長銃身]]化、二脚を追加した'''アサルトライフルからの発展型'''(アサルトライフルと構造が似ているため、操作・整備技術の習得を早める効果がある)2通りの基本パターンに分類できる。


[[イギリス軍]]は[[L7汎用機関銃]](GPMG)のほかに大戦世代の[[ブレン軽機関銃]]も改修の上で使い続けていたが{{Efn2|[[イギリス連邦]]では、[[カナダ軍]]や[[オーストラリア軍]]のように[[FN FAL|FAL小銃]]の軽機関銃版([[FN FAL#FALO|FALO]])を調達する国もあったが、イギリス軍はこれでは持続射撃能力が不足であると考えてブレンを使い続けることにしたものであり、GPMGと比べても、弾帯が植生に絡んだり氷を噛み込んだりすることがないという利点があった{{Sfn|Grant|2013|pp=53-56}}。}}、[[1985年]]、その後継として[[L85]]小銃の発展型であるL86A1 LSWが制式化された{{Sfn|Grant|2013|p=59}}{{Sfn|床井|2006|p=281}}。ただしL86は持続射撃能力の不足が問題になり{{Sfn|Grant|2013|p=59}}、まず[[2001年]]に[[アフガニスタン紛争 (2001年-)|アフガニスタン]]への派遣部隊のためにミニミ軽機関銃を緊急調達し、[[2004年]]に正式採用された{{Sfn|McNab|2020|pp=128-132}}。しかし、[[2018年]]には分隊単位でL7汎用機関銃を装備して、LSWとミニミは廃止されることになった<ref>{{Cite news |title=British Army to scrap old infantry weapon systems |date=August 8, 2018 |url=https://ukdefencejournal.org.uk/british-army-to-scrap-old-infantry-weapon-systems/ |newspaper=[[:en:UK Defence Journal|UK Defence Journal]] |accessdate=2021/05/31}}</ref>。一方、[[アメリカ海兵隊]]はこれとは逆に、[[2010年]]よりM249軽機関銃の一部を[[M27 IAR]](歩兵自動小銃)に代替することとした{{Sfn|McNab|2020|pp=162-179}}。これは[[H&K HK416]]の派生型で、M249よりも軽く射撃精度が高く、またM16小銃との互換性も高いことが評価されたものであったが、やはり持続射撃能力の不足という問題があり、完全な代替は困難と考えられている{{Sfn|McNab|2020|pp=162-179}}。
== 歴史 ==
; 分隊支援火器の登場前
: 機関銃の登場によって歩兵戦の火力は向上したものの兵士による携行が困難であった機関銃は移動を伴う突撃時にはその火力を発揮することはできなかった。その場合、連射が不可能なボルトアクション式[[小銃]]と威力が弱い[[短機関銃]]が歩兵火力の中心となり、[[弾幕]]による[[制圧射撃]]が弱いか、または無いという問題が生じた。分隊支援火器は、この問題を解決するために、[[機関銃]]を突撃時にも携行できるようにする、という発想から生まれた。この[[武器]]の登場と、それを扱う専門の援護射撃兵の教育により、個々の兵士は弾薬を節約することができ、訓練時間を短くすることができ、かつ分隊が持つ弾薬の重量を軽減することができた{{efn|[[民兵]]や非正規軍においても、この運用思想は利点をもつ。私費で購入する弾薬代を節約できる上に、訓練の時間も短くすることができ、正規軍と同じような行動を非軍事用の銃で行うことができる。戦時には軽装備の民兵でも、1個分隊に1丁の分隊支援火器を支給して火力を増強できる}}。
; 分隊支援火器の登場
:[[第一次世界大戦]]期に[[アメリカ軍]]で採用された[[ブローニングM1918自動小銃|ブローニングBAR]]は初期の分隊支援火器として有名である。BARは当時の主力小銃である[[スプリングフィールドM1903小銃|M1903小銃]]の倍近い重量ではあったものの兵士が携行できる重量でありガス圧による自動装填機能、セミ/フル切り替え機能、20発の着脱式弾倉を備えておりボルトアクション小銃より強力な制圧能力を持っていた。[[第二次世界大戦]]前にはBARのように自動装填機能、フルオート機能、数十発程度の着脱式弾倉を備えた[[軽機関銃]]([[ブレン軽機関銃]]、[[DP28軽機関銃]]、[[FM mle1924/29軽機関銃|mle1924/29軽機関銃]]など)が登場し大戦期の[[分隊]][[火力 (軍事)|火力]]の中核となった。
; 分隊支援火器の進化
: 第二次世界大戦後には[[FN FAL]]といった自動小銃が登場した。これらのライフルは基本的にフルオート(連続)射撃が可能であるが、特に新兵など興奮しすぎた[[兵士]]は、戦闘においてあっという間に[[弾薬]]を使い果たしてしまう。また、フルオート射撃時にはアサルトライフルの小型軽量さが災いして反動が激しくなり、銃口が跳ね上がるので当然命中精度は低くなる。従って、多くの軍隊では一般兵士に対して、フルオートの使用を近接戦闘時に限定するように教育している{{efn|フルオート射撃の抑制で云えば、[[アメリカ陸軍]]の一般兵士用のアサルトライフル・[[M16自動小銃]]のA2・A4型は、フルオート機能を敢えて廃止してセミオート(単射)機能と3点バースト射撃(引き金を引くと3発だけ連射される)機能だけに限定したほどである}}。このような弾薬消費を抑える努力や工夫によって、[[兵站]]への負担軽減と弾薬を携行する前線兵士の疲労も同様に軽減できる。こうした事情から依然として軽機関銃による火力支援を必要とした。この時代の分隊支援火器([[M60機関銃]]や[[FN MAG]]など)では[[弾帯|ベルト給弾式]]が取り入れられ大戦期の分隊支援火器よりも制圧能力が向上した。


<gallery widths="200" heights="150">
== 利点 ==
ファイル:Soviet RPK.JPEG|RPK軽機関銃
* 信頼性が高く連続射撃が可能([[弾幕]]による実効制圧力が増す)
ファイル:M27 IAR side profile.jpg|M27 IAR
* [[アサルトライフル]]と[[弾薬]]が共通なため、[[兵站]]の負担軽減になる
ファイル:SIG Sauer XM250.png|M249の後継となる[[XM250]]
* 小型で持ち運びが容易な軽量の[[機関銃]]は、敵にとっては標的の特定と順位付けを行うのが難しい
</gallery>
* [[二脚|二脚(バイポッド)]]によって高精度の射撃ができる
* 分隊支援火器の専門[[兵士]]がいれば
** 高精度・効率的{{efn|分隊支援火器は軽量化のために連続射撃時の制約が大きく、多数のフルオート射撃をした場合には、給弾過程で早発爆発するコックオフ事故やその他の動作不具合を起こし易い。そういった短所も含めた訓練が求められ、兵士の専門化は射撃精度の向上だけでなく兵器の効率的運用にもつながる}}な射撃が期待できる
** [[弾薬]]の携行量を最適化できる
** 予備[[銃砲身|銃身]]などまで含めた装備への配慮が期待できる
* [[アサルトライフル]]の発展型の場合
** 基本設計・基本操作が共通しており、射撃と保守の訓練期間が軽減できる
** 一部共通する部品については保守・修理で利便性が向上する
** 製造・取得コストの低廉化が期待できる

== 欠点 ==
* [[アサルトライフル]]と共通の[[弾薬]]、つまり[[汎用機関銃]]より低威力の弾薬を使用するため、射程・殺傷力が劣り、正面からの撃ち合いでは『力負け』する(「アサルトライフルに毛が生えた」程度のもの)
* [[二脚|二脚架]]運用である以上、[[三脚|三脚架]]に固定された汎用機関銃と比較するとことさら命中精度に劣る
* 従来の[[機関銃]]に比べると、強引に軽量化した分だけ構造的に無理が多く信頼性が低い
* 従来の機関銃とまったく互換性のないパーツ・弾薬を全軍に適切に供給し続けなければならない
* 機関銃手ともまた異なる分隊支援火器の専門[[兵士]]を、全軍の各[[分隊]]に十分配属できるようかなり大量に育成する必要がある
* [[アサルトライフル]]の発展型の場合
** [[銃砲身|銃身]]交換ができないため連射性に問題が生じる
** [[弾倉]]の装弾数が少ないため連続射撃において不利(ドラム式弾倉を使用するなどして解決する方法もあるが命中精度が高く装填作業が簡単な発展型においては無理に装弾数を増やすメリットは少ない)

== 日本での運用 ==
[[日本]]において近年まで分隊支援火器の役割を果たしていたのは[[62式7.62mm機関銃]]である。

一般に[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm]]の[[弾薬]]を使用する[[機関銃]]は、[[汎用機関銃]]として運用されるが、[[64式7.62mm小銃]]と共通の弱装弾を用いるため、分隊支援火器に近い運用がなされていたのである。

[[89式5.56mm小銃]]が採用され、弾薬が[[5.56x45mm NATO弾|5.56mm]]に変更されると、それに合わせて[[ベルギー]]製の[[ミニミ軽機関銃]]を[[住友重機械工業]]が[[ライセンス生産]]し、5.56mm機関銃MINIMIとして配備され、62式機関銃との代替が進みつつある。ミニミは、[[アメリカ軍]]でほぼ同じものが[[M249軽機関銃|M249]]として採用されており、もちろん弾薬も共通である。<!--この項、軽機関銃と分隊支援火器とが混乱しているのでは?-->


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
{{notelist2}}
=== 出典 ===
=== 出典 ===
{{Reflist}}
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|last=床井|first=雅美|year=2006|title=最新マシンガン図鑑|publisher=[[徳間書店]]|isbn=4-19-892527-5|ref=harv}}
* {{Cite book|first=Neil|last=Grant|year=2013|title=The Bren Gun|series=Osprey Weapon Series|publisher=[[:en:Osprey Publishing|Osprey Publishing]]|isbn=978-1782000822|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|first=Chris|last=McNab|origyear=2017|year=2020|title=ミニミ軽機関銃-最強の分隊支援火器|series=Osprey Weapon Series|others=床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)|publisher=[[並木書房]]|isbn=978-4890633999|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|first=Gordon L.|last=Rottman|origyear=2011|year=2018|title=AK-47ライフル-最強のアサルト・ライフル|series=Osprey Weapon Series|others=床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)|publisher=並木書房|isbn=978-4890633708|ref=harv}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons|Squad Automatic Weapon}}
{{Commons|Squad Automatic Weapon}}
* [[機関銃一覧]]
* [[機関銃一覧]]
* [[軽機関銃]]
* [[汎用機関銃]]
* [[機関銃]]
* [[機関銃]]
* [[アサルトライフル]]
* [[分隊]]
* [[分隊]]


{{小火器}}
[[Category:火器の種類|ふんたいしえんかき]]
[[Category:分隊支援火器|*ぶんたいしえんかき]]
{{デフォルトソート:んたいしえんかき}}
[[Category:汎用機関銃|*ふんたいしえんかき]]
[[Category:小火器の種類]]
[[Category:分隊支援火器|*ふんたいしえんかき]]
[[Category:軽機関銃|*ふんたいしえんかき]]
[[Category:軽機関銃|*ふんたいしえんかき]]

2023年7月19日 (水) 07:49時点における最新版

M249軽機関銃。アメリカ陸軍の分隊支援火器計画で調達された。

分隊支援火器(ぶんたいしえんかき、英語: Squad automatic weapon, SAW)は、機関銃を軽量小型にして、歩兵小銃弾薬や部品が共用でき、兵士が1人で運用できるようにしたもの[1]軽機関銃の別称としても扱われるほか[2]軽支援火器: Light Support Weapon, LSW)と称されることもある[3]

なお分隊支援火器という呼称は武器の使用区分を表しており、武器としての区分は機関銃である[4]

概要[編集]

第二次世界大戦後、西側諸国では歩兵分隊の銃器を自動小銃汎用機関銃に統合化し、軽機関銃は廃止される方向にあったのに対し[5]東側諸国では、汎用機関銃は中隊レベルの装備とされて[6]、これとは別に分隊レベルのための軽機関銃も維持していた[5]。また歩兵用小銃とあわせて分隊用の軽機関銃も中間弾薬に移行しており[7]1953年RPD軽機関銃を導入したのち、1961年からは、AKM小銃をもとに開発されたRPK軽機関銃に移行した[8]

ベトナム戦争において、東側の武器体系を採用するベトナム人民軍は分隊用の軽機関銃を装備していたのに対し、アメリカ軍は汎用機関銃であるM60機関銃のみを装備していた[6]。しかし特に徒歩行軍の機会が多い熱帯雨林山岳地域での戦闘において、機関銃本体も弾薬も重く嵩張るM60は輸送のために労力を要し、決定的に不利であった[9]。この経験から、アメリカ軍でも軽機関銃の重要性が再認識されるようになった[6]

1960年代末より、アメリカ陸軍は歩兵部隊が持つ火力のタイプと組み合わせに関する研究に着手していたが、これらの戦訓を踏まえて「戦術的多様性を達成するため、小銃分隊の各射撃班に1名ずつ、計2名の機関銃手が必要である」との結論に達した[10]。これを受けて1972年には新型機関銃の要求事項が提示され、計画名は分隊支援火器(SAW)とされた[10]。競争試作を経て1979年より比較試験が行われ、M16自動小銃の軽機関銃版(XM106)やH&K HK21の改良型(XM262)を抑えて、ミニミ軽機関銃M249軽機関銃として採用された[10]

イギリス軍L7汎用機関銃(GPMG)のほかに大戦世代のブレン軽機関銃も改修の上で使い続けていたが[注 1]1985年、その後継としてL85小銃の発展型であるL86A1 LSWが制式化された[12][13]。ただしL86は持続射撃能力の不足が問題になり[12]、まず2001年アフガニスタンへの派遣部隊のためにミニミ軽機関銃を緊急調達し、2004年に正式採用された[14]。しかし、2018年には分隊単位でL7汎用機関銃を装備して、LSWとミニミは廃止されることになった[15]。一方、アメリカ海兵隊はこれとは逆に、2010年よりM249軽機関銃の一部をM27 IAR(歩兵自動小銃)に代替することとした[16]。これはH&K HK416の派生型で、M249よりも軽く射撃精度が高く、またM16小銃との互換性も高いことが評価されたものであったが、やはり持続射撃能力の不足という問題があり、完全な代替は困難と考えられている[16]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ イギリス連邦では、カナダ軍オーストラリア軍のようにFAL小銃の軽機関銃版(FALO)を調達する国もあったが、イギリス軍はこれでは持続射撃能力が不足であると考えてブレンを使い続けることにしたものであり、GPMGと比べても、弾帯が植生に絡んだり氷を噛み込んだりすることがないという利点があった[11]

出典[編集]

  1. ^ "銃". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2021年5月18日閲覧
  2. ^ Machine gun”. ブリタニカ百科事典 (2020年5月19日). 2021年5月18日閲覧。
  3. ^ 床井 2006, pp. 6–7.
  4. ^ McNab 2020, pp. 47–52.
  5. ^ a b 床井 2006, pp. 8–16.
  6. ^ a b c 床井 2006, pp. 18–21.
  7. ^ McNab 2020, pp. 2–10.
  8. ^ Rottman 2018, pp. 66–71.
  9. ^ McNab 2020, pp. 182–184.
  10. ^ a b c McNab 2020, pp. 26–31.
  11. ^ Grant 2013, pp. 53–56.
  12. ^ a b Grant 2013, p. 59.
  13. ^ 床井 2006, p. 281.
  14. ^ McNab 2020, pp. 128–132.
  15. ^ “British Army to scrap old infantry weapon systems”. UK Defence Journal. (2018年8月8日). https://ukdefencejournal.org.uk/british-army-to-scrap-old-infantry-weapon-systems/ 2021年5月31日閲覧。 
  16. ^ a b McNab 2020, pp. 162–179.

参考文献[編集]

  • 床井, 雅美『最新マシンガン図鑑』徳間書店、2006年。ISBN 4-19-892527-5 
  • Grant, Neil (2013). The Bren Gun. Osprey Weapon Series. Osprey Publishing. ISBN 978-1782000822 
  • McNab, Chris『ミニミ軽機関銃-最強の分隊支援火器』床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)、並木書房〈Osprey Weapon Series〉、2020年(原著2017年)。ISBN 978-4890633999 
  • Rottman, Gordon L.『AK-47ライフル-最強のアサルト・ライフル』床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)、並木書房〈Osprey Weapon Series〉、2018年(原著2011年)。ISBN 978-4890633708 

関連項目[編集]