(Go: >> BACK << -|- >> HOME <<)

コンテンツにスキップ

「ギリシア文字」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
誤植
m 121.50.43.189 (会話) による版を Alexbot による版へ巻き戻し
27行目: 27行目:
[[古代ギリシア語]]では、文章は左横書きで書き始めて行末で[[牛耕式]]に改行し、次の行は前の行の下に右横書きで、文字を[[鏡文字]]にして書いていた。ヘレニズム時代頃には左横書きで行は上から下に移動するという書式で統一され現在に至る。
[[古代ギリシア語]]では、文章は左横書きで書き始めて行末で[[牛耕式]]に改行し、次の行は前の行の下に右横書きで、文字を[[鏡文字]]にして書いていた。ヘレニズム時代頃には左横書きで行は上から下に移動するという書式で統一され現在に至る。


「[[ディガンマ]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/nonattic.html#digamma ディガンマ] (イングリッシュ)</ref>、「[[スティグマ (ギリシア文字)|スティグマ]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/other_ligatures.html#stigma スティグマ] (イングリッシュ)</ref>、「[[ヘータ]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/unicode_aitch.html#tackheta ヘータ] (イングリッシュ)</ref>、「[[サン (ギリシア文字)|サン]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/nonattic.html#san サン] (イングリッシュ)</ref>、一つ目の「[[コッパ]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/nonattic.html#koppa コッパ] (イングリッシュ)</ref>、「[[サンピ]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/other_nonattic.html#sampi サンピ] (イングリッシュ)</ref>といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数文字としてのみ使われる。<!--この内「コッパ」は、現代ギリシア語では、異なる字体(二つ目の「コッパ」)のものを用いているらしい。-->また、バクトリアには「[[ショー (ギリシア文字)|ショー]]」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/nonattic.html#sho ショー] (イングリッシュ)</ref>と呼ばれる文字が加えられているが、これはバクトリア音素のʃからとられたものである。[[Unicode]]には「ヨット」<ref>[http://www.tlg.uci.edu/~opoudjis/unicode/yot.html#ancient ヨット] (イングリッシュ)</ref>と呼ばれる文字が加えられているが、これはラテン文字の[[J]](J は、中世に [[I]] から分岐して成立した文字である)からとられたもので、古代には存在してはおらず、また現代でも日常的なギリシア語に使われることはない。この文字は、[[言語学]]で、有史以前のギリシア語の発音(わたりの口蓋音)を表記するためのものらしいが、詳細は不明である。
「[[ディガンマ]]」、「[[スティグマ (ギリシア文字)|スティグマ]]」、「[[ヘータ]]」、「[[サン (ギリシア文字)|サン]]」、一つ目の「[[コッパ]]」、「[[サンピ]]」といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数文字としてのみ使われる。<!--この内「コッパ」は、現代ギリシア語では、異なる字体(二つ目の「コッパ」)のものを用いているらしい。-->また、バクトリアには「[[ショー (ギリシア文字)|ショー]]」と呼ばれる文字が加えられているが、これはバクトリア音素のʃからとられたものである。[[Unicode]]には「ヨット」と呼ばれる文字が加えられているが、これはラテン文字の[[J]](J は、中世に [[I]] から分岐して成立した文字である)からとられたもので、古代には存在してはおらず、また現代でも日常的なギリシア語に使われることはない。この文字は、[[言語学]]で、有史以前のギリシア語の発音(わたりの口蓋音)を表記するためのものらしいが、詳細は不明である。


古代には[[大文字]]のみで、また筆記体もない。その後、中世以降に[[小文字]]が案出され、[[ビザンティン帝国]]時代の文書には筆記体も見られる。現代ギリシアでは、あまり筆記体を用いないようである。各大文字には一つの小文字が対応するが、「シグマ」のみ例外的に二つの小文字を持つ。語頭・語中の場合 σ 、語尾の場合には {{Lang|el|ς}} を用いられる。例えば {{Lang|el|ΘΕΟΣ}}(神)を小文字で表記すると、{{Lang|el|θεοσ}} とならずに、{{Lang|el|θεος}} となる。今日、古代ギリシア語を表記する場合、すべて大文字または小文字でも、大文字と小文字の併用でも特に構わない。小文字を使用する場合は、3種のアクセント記号(鋭アクセント、重アクセント、曲アクセント)や気息記号をつけるが、すべて大文字の場合、何もつけない。現代ギリシア語では、文頭と固有名詞の語頭に大文字、それ以外を小文字で表記するのが基本である。無論、ラテン文字と同様、すべて大文字にしても間違いではない。また、古代とは発音体系が異なるため、気息記号は用いられず、さらに1980年代以降は、アクセント記号の体系は簡略化された。今後もさらに簡略化が進むらしい。
古代には[[大文字]]のみで、また筆記体もない。その後、中世以降に[[小文字]]が案出され、[[ビザンティン帝国]]時代の文書には筆記体も見られる。現代ギリシアでは、あまり筆記体を用いないようである。各大文字には一つの小文字が対応するが、「シグマ」のみ例外的に二つの小文字を持つ。語頭・語中の場合 σ 、語尾の場合には {{Lang|el|ς}} を用いられる。例えば {{Lang|el|ΘΕΟΣ}}(神)を小文字で表記すると、{{Lang|el|θεοσ}} とならずに、{{Lang|el|θεος}} となる。今日、古代ギリシア語を表記する場合、すべて大文字または小文字でも、大文字と小文字の併用でも特に構わない。小文字を使用する場合は、3種のアクセント記号(鋭アクセント、重アクセント、曲アクセント)や気息記号をつけるが、すべて大文字の場合、何もつけない。現代ギリシア語では、文頭と固有名詞の語頭に大文字、それ以外を小文字で表記するのが基本である。無論、ラテン文字と同様、すべて大文字にしても間違いではない。また、古代とは発音体系が異なるため、気息記号は用いられず、さらに1980年代以降は、アクセント記号の体系は簡略化された。今後もさらに簡略化が進むらしい。
434行目: 434行目:
|}
|}
音声記号は[[国際音声記号]] (IPA) による。
音声記号は[[国際音声記号]] (IPA) による。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist}}

{{Commons|Category:Greek_letters}}
{{Commons|Category:Greek_letters}}



2010年3月9日 (火) 22:31時点における版

ギリシア文字
現代ギリシア語による「ギリシア文字」
類型: アルファベット
言語: ギリシア語
時期: 紀元前9世紀頃-現在
親の文字体系:
子の文字体系: ゴート文字
グラゴル文字
キリル文字
コプト文字
エトルリア文字他の古代イタリア文字
ラテン文字
アルメニア文字 (論争あり)
グルジア文字 (論争あり?)
Unicode範囲: U+0370-U+03E1, U+03F0-U+03FF (ギリシア文字)
U+1F00–U+1FFF (ギリシア文字拡張)
U+10140–U+1018F (古代ギリシア数字)
ISO 15924 コード: Grek
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
テンプレートを表示
メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

ギリシア文字(ギリシアもじ/ギリシャ文字と表記される事も)は、古代ギリシア人ギリシア語を表記するため、フェニキア文字を元に作った文字である。ラテン文字は、このギリシア文字を元に、後に生まれたものでもある。今日でも現代ギリシア語の表記に用いられ、また非ギリシア語圏でも、自然科学(主に数学分野)を始めとする様々の分野で使われている。

アルファベット」という言葉は、この文字体系の伝統的配列の1番目(アルファ)と2番目(ベータ)の文字名称が、その語源である。各文字の日本語慣用名称は、主として英語式発音に由来する。例えば、Π は、古代ギリシア語では「ピー」と発音するが、日本では一般に「パイ」と読まれる。これは英語の pi [paɪ] に倣ったものである。

歴史

ギリシア文字以前には、線文字B、またはミュケナイ文字と呼ばれている文字体系の使用もみられるが、これは仮名文字と同じく音節文字で、ギリシア語の表記には、必ずしも適さないものであった。ギリシア文字の案出は、紀元前9世紀頃まで遡ると考えられている。その元となった、セム語族フェニキア人によるフェニキア文字は、子音ばかりの22文字であった。これは、セム諸語が子音に言語の核を置き、母音は補助的な役割しかもたないためである。一方、ギリシア語においては、母音は極めて重要な位置を占める。そこで、ギリシア語発音にはない音価を持つフェニキア文字を、母音を表す音素文字とするなど、さまざまな改良が加えられた。

古代ギリシア語と現代ギリシア語では発音体系が著しく異なり、このため各文字の音価も異なる。下表の古代の音価は、現代の言語学の研究によって推測されているアッティカ地方のものである。これとは別に、しばしば「古典的」と呼ばれる発音体系は、エラスムス式発音(:Erasmian pronunciation)とも呼ばれ、これは16世紀の人文学者エラスムスによって整理されたものを元にしている(地域によって、幾つかヴァリエーションがある)。実際の古代の発音とはかなり異なるものもあるが、古代ギリシア語が死語である以上、元来の発音に拘泥する必要はなく、こちらの発音を用いて読むことの方が多い。例を挙げれば、Φ の古代アッティカ発音は[pʰ](帯気音の[p])と推測されるが、エラスムス式では [f] である。現代ギリシアでは、古代の文章でも、現代の発音体系で読まれる。これは、日本人が古典文学を現代日本語発音で読むのと同じである。

古代ギリシア語では、文章は左横書きで書き始めて行末で牛耕式に改行し、次の行は前の行の下に右横書きで、文字を鏡文字にして書いていた。ヘレニズム時代頃には左横書きで行は上から下に移動するという書式で統一され現在に至る。

ディガンマ」、「スティグマ」、「ヘータ」、「サン」、一つ目の「コッパ」、「サンピ」といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数文字としてのみ使われる。また、バクトリアには「ショー」と呼ばれる文字が加えられているが、これはバクトリア音素のʃからとられたものである。Unicodeには「ヨット」と呼ばれる文字が加えられているが、これはラテン文字のJ(J は、中世に I から分岐して成立した文字である)からとられたもので、古代には存在してはおらず、また現代でも日常的なギリシア語に使われることはない。この文字は、言語学で、有史以前のギリシア語の発音(わたりの口蓋音)を表記するためのものらしいが、詳細は不明である。

古代には大文字のみで、また筆記体もない。その後、中世以降に小文字が案出され、ビザンティン帝国時代の文書には筆記体も見られる。現代ギリシアでは、あまり筆記体を用いないようである。各大文字には一つの小文字が対応するが、「シグマ」のみ例外的に二つの小文字を持つ。語頭・語中の場合 σ 、語尾の場合には ς を用いられる。例えば ΘΕΟΣ(神)を小文字で表記すると、θεοσ とならずに、θεος となる。今日、古代ギリシア語を表記する場合、すべて大文字または小文字でも、大文字と小文字の併用でも特に構わない。小文字を使用する場合は、3種のアクセント記号(鋭アクセント、重アクセント、曲アクセント)や気息記号をつけるが、すべて大文字の場合、何もつけない。現代ギリシア語では、文頭と固有名詞の語頭に大文字、それ以外を小文字で表記するのが基本である。無論、ラテン文字と同様、すべて大文字にしても間違いではない。また、古代とは発音体系が異なるため、気息記号は用いられず、さらに1980年代以降は、アクセント記号の体系は簡略化された。今後もさらに簡略化が進むらしい。

ギリシア文字は、独自の音価を持つ文字があるため、ラテン文字に写す際には規則にのっとって行われる。例えば、長母音と短母音を区別したり(eとē、oとō)、気息音をHとして表したりする。もっともこれは現代のやり方であって、古代にギリシア語がラテン文字表記される場合には、変換の方法はまちまちであった。

ギリシア文字は数を表す際にも使われる。「イオニア式」と呼ばれる記数法は、アラビア語圏におけるアラビア数字(インド数字)のような別個の文字を用いず、通常のギリシア文字を使ってこれを表した。この点は、ヘブライ文字やラテン文字と同様である。例えば、1は αʹ、10 は ιʹ で表し、11は ιαʹ である。6 を表す「スティグマ」は、「シグマ」の語末形と形態が酷似しているため、現代ではこれを「シグマ」と呼ぶこともあり、また6を表す場合に代用されることもある。(詳細はギリシアの数字の項目を参照)

ギリシア文字はキリル文字などのスラブ語アルファベットの成立にも影響を及ぼしたほか、エジプトコプト文字もギリシア文字から派生している。

文字表

「メガ」、「プシーロン」、「ミークロン」といった語は、古代末期に文字を区別するために付加されたもの。その他、ギリシア文字の各文字の詳細は、それぞれ独立の項参照。

大文字と
小文字
文字名称 音価 数値 ヘブライ
文字
ラテン
文字
HTML
文字参照
古代末期 現代 慣用 古代 中世 現代
Α α アルパ アルファ アルファ [a] [aː] [a] [a] 1 א a &Alpha; &alpha;
Β β ベータ ヴィタ ベータ [b]   [v] 2 ב b &Beta; &beta;
Γ γ ガンマ ガマ ガンマ [g]   [ɣ, ʝ] 3 ג g &Gamma; &gamma;
Δ δ デルタ ゼルタ/ðelta/ デルタ [d]   [ð] 4 ד d &Delta; &delta;
Ε ε エ・プシーロン エ・プシロン イプシロン [e]   [e] 5 ה e &Epsilon; &epsilon;
Ϝ ϝ() ディガンマ - ディガンマ [u] [w] - - 6 ו   &#988; &#989;
Ϛ ϛ スティグマ - スティグマ [st] - - 6 ו   &#986; &#987;
Ζ ζ ゼータ ジタ/zita/ ゼータ [zd] [dz]   [z] 7 ז z &Zeta; &zeta;
Η η エータ イタ イータ [ɛː]   [i] 8 ח ē &Eta; &eta;
Ͱ ͱ ヘータ - ヘータ [hː] - - 8 ח &#880 &#881
Θ θ テータ シタ シータ [tʰ]   [θ] 9 ט th &Theta; &theta;
Ι ι イオータ ヨタ イオタ [i] [iː]   [i] 10 י i &Iota; &iota;
Κ κ カッパ カパ カッパ [k]   [k] 20 כ (ך) k &Kappa; &kappa;
Λ λ ラム(ブ)ダ ラムダ/lamða/ ラムダ [l]   [l] 30 ל l &Lambda; &lambda;
Μ μ ミュー ミュー [m]   [m] 40 מ(ם) m &Mu; &mu;
Ν ν ニュー ニュー [n]   [n] 50 נ (ן) n &Nu; &nu;
Ξ ξ クシー クシ クシー
クサイ
グザイ
[ks]   [ks] 60 ס ks, x &Xi; &xi;
Ο ο オ・ミークロン オ・ミクロン オミクロン [o]   [o] 70 ע o &Omicron; &omicron;
Π π ピー パイ [p]   [p] 80 פ (ף) p &Pi; &pi;
Ϻ ϻ サン - サン [s] - - 90 צ(ץ)   &#1018; &#1019;
Ϸ ϸ ショー - ショー [ʃ] - - 90 צ(ץ)   &#1015; &#1016;
Ϙ ϙ() コッパ - コッパ [q] - - 90 ק   &#984; &#985;
Ρ ρ ロー ロー [r]   [r] 100 ר r, rh &Rho; &rho;
Σ σ シーグマ シグマ/siγma シグマ [s] [z]   [s] [z] 200 ש s &Sigma; &sigma;
ς 6(現代) &sigmaf;
Τ τ タウ タフ/taf/ タウ [t]   [t] 300 ת t &Tau; &tau;
Υ υ ユー・プシーロン イ・プシロン ウプシロン [y] [yː]   [i] 400   u, y &Upsilon; &upsilon;
Φ φ ピー フィ ファイ [pʰ] [Φ] [f] 500   ph &Phi; &phi;
Χ χ キー カイ [kʰ]   [x] 600   kh, ch &Chi; &chi;
Ψ ψ プシー プシ プサイ [ps]   [ps] 700   ps &Psi; &psi;
Ω ω オー・メガ オ・メガ オメガ [ɔː]   [o] 800   ō &Omega; &omega;
Ͳ ͳ() サンピ - サンピ [sː] - - 900     &#882; &#883;

音声記号は国際音声記号 (IPA) による。


Template:Link FA