利根川・吾妻川合流点付近の河川地形発達に与える前橋泥流の影響

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  • Impacts of Maebashi Mud flow Event to the Fluvial Landform Development neighboring the Confluence of

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抄録

はじめに<BR>流域の長期的な地形発達において,岩屑なだれなどの大規模土砂供給イベントが有する意義は,なお不明確である.現段階では,古い時代のイベントを対象に,その前後数千_から_数万年間の地形変化過程を復元する研究事例を蓄積していく必要がある.本研究では,約2.4万年前の浅間火山・黒斑山の大規模山体崩壊に伴う「応桑岩屑なだれ」に由来する「前橋泥流(MMf)」を対象とし,その利根川への流入口に位置する子持地域において,支流起源の大規模土砂供給に対する本流の応答過程を復元した.<BR>三方を第四紀火山に囲まれた本地域には段丘地形が明瞭に発達するが,竹本(1998)が利根川支流片品川沿いを中心に,段丘面をテフラに基づき編年したにとどまる.また,前橋泥流による地形変化そのものや,前橋泥流堆積の影響を受けたであろう長期的な河川の応答に関しては,ほとんど検討されていない.<BR>道路建設に先立つ遺跡発掘調査に際し,数箇所にてトレンチを掘削する機会が得られたため,河成堆積物,降下テフラ,MMfの三者と地形面との関係を,詳細に明らかにすることができた. <BR>段丘面の特徴<BR>!)!) 長坂面<BR>Hr-HP(約5万年前)の被覆により,5_から_6万年前に離水した層厚15_から_20mの礫層を主構成層とするが,南部では礫層を覆う層厚5mのMMfが分布する.南部ではHr-HPが認められない.<BR>!)!) 西伊熊面<BR>礫層を整合に覆うMMfからなる.As-BP群上部(約2万年前)以降のテフラに覆われる.<BR>!)!) 白井_I_面<BR>MMfの再堆積物を多く含む礫層からなり,As-Sr(約1.8万年前)を挟むロームが発達する.礫層厚は,下流側において10m以上に達する.<BR>!)!) 白井_II_面<BR> 白井_I_面の構成礫層を不整合に覆う層厚約5mの礫層からなり,黒ボクおよびHr-FP(六世紀)に覆われる.<BR>!)!) 浅田面<BR>層厚約5mの段丘礫層からなり,地質資料によれば現河床よりも低所にMMfが分布する.Hr-FPは分布しない.<BR>地形発達史<BR>!)!) 前橋泥流の流下以前<BR>約5万年前までに,長坂面構成礫層が堆積した.その後,最終氷期の亜間氷期に長坂面が段丘化した.最終氷期後半の亜氷期に至る時期には,河床は上昇傾向にあった.<BR> !)!) 前橋泥流の流下・堆積<BR>2.4万年前頃,MMfは吾妻川河谷を東南東方向に流下した.長坂面がMMfの推定流下方向に対し,障壁のように発達することから,MMfは長坂面の南部に衝突し,これをのりこえ,さらには赤城火山麓の急崖に激突したと推測される.土砂の大半は南へ下り,一部は利根川を遡上した.MMfは,長坂面上に分布していたロームなどを根こそぎ剥ぎ取ったと解釈され,長坂面上の微起伏の形成に大きく寄与した. <BR>MMfは,当時の河床から最大40m以上の高度に達したが,長坂面をのりこえ,利根川を遡上したMMfは,当時の利根川河谷を「のりあげ部」と同レベルまで埋め尽くしてはいない.また,MMfには径1m以上のブロックが含まれるが,流れ山は存在しない.MMfが前地形の影響を受け,既存の起伏を埋めきることなく,当時の地表面を広く覆って定着したことを示唆する.<BR>!)!) 前橋泥流の流下後<BR>MMfの堆積層厚が急減する利根川の上流側では,その堆積直後に西伊熊面がMMf堆積面として段丘化し,As-BP群上部降下期からAs-Sr降下期にかけて,MMfを侵食して形成された白井_I_面が段丘化した.利根川・吾妻川合流点付近では,上流側よりも厚く堆積したMMfに見合う格好でやや深い谷が形成され,As-Sr降下期以前には河床の小規模な埋積期を迎えた.すなわち,MMfが土砂の供給源となったことに加えて,気候が乾燥・寒冷であったために,緩勾配域の下流側において,MMfの一部が河成堆積物に混じって再堆積して,白井_I_面の構成層である層厚10m以上の礫層が形成された.<BR>As-Sr降下後,白井_II_面が広く形成された.この時期は,河川流量が増加していく最終氷期末期から後氷期への移行期において河床高度が安定し,側刻が活発化した時期にあたる.白井_II_面の段丘化後,六世紀以降に浅田面が段丘化した.<BR>謝辞<BR>トレンチ掘削調査に及び,群馬県埋蔵文化財調査事業団の皆様には,多大なご協力をいただいた.<BR>引用文献<BR>竹本弘幸 1998. 地理学評論 71A: 783-804.

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参考文献 (1)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205691840512
  • NII論文ID
    10020533391
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.237.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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