2022年10月10日、ウクライナの首都キーウ。
AP Photo/Roman Hrytsyna
- 10月10日(現地時間)、ロシアはミサイルやドローンでウクライナ各地を攻撃した。
- 使用されたドローンは、「自爆」ドローンまたは「カミカゼ」ドローンとも呼ばれるイラン製の徘徊型兵器だと、ウクライナ当局は特定している。
- 軍事専門家の中には、ウクライナの人々の間に「恐怖と混乱」を広めるためにプーチン大統領がこうした兵器を意図的に使用していると指摘する声もある。
東部と南部の戦線でウクライナ軍が攻勢を強める中、ロシア軍は戦線から遠く離れた民間人の居住地域を攻撃して、専門家の言う「恐怖と混乱」を植え付けている。
10月10日、ロシア軍は戦線から数百キロ離れた首都キーウやリビウを含むウクライナ各地の都市にミサイルや自爆ドローンによる攻撃を次々と仕掛けた。被害の全容はまだ分かっていないが、複数の死者および負傷者が出たと報じられている。
数日前には、ロシア軍がキーウ近くの都市を攻撃したばかりだった。ウクライナ当局は、いずれの攻撃にもイラン製の徘徊型兵器(自爆ドローン)が使用されたと認めている。
イギリス、キングス・カレッジ・ロンドンのCentre for Military Ethicsの名誉研究員マリーナ・マイロン(Marina Miron)氏は、ロシアのプーチン大統領は「一般市民の間に恐怖と混乱を生み出し、ウクライナ政府に対し、戦場から遠く離れていても彼らを戦闘に巻き込むことができると示そうとしている」とInsiderに語った。
そうすることで、プーチン大統領は自分たちは安全だと信じていたかもしれない一般市民に心理的な影響を「もたらそうとしている」とマイロン氏は言う。これはウクライナ側が占領されたクリミア半島などでやってきたことだ。
「ドローンとミサイル、両方を使った攻撃によって(プーチン大統領は)『我々はまだこれまで使ってこなかった能力を持っているし、その使用を増やすことができる。戦場で我々が負けたからと言って、自分たちがこの戦争に勝てると思うな』というメッセージを送っている」とマイロン氏は指摘している。
イラン製のカミカゼドローン
ウクライナのゼレンスキー大統領は、10日の攻撃で使用されたドローンの一部が「イラン製の『シャヘド(Shahed)』」だと特定し、ロシアはウクライナのエネルギー関連施設を狙うことで「パニックや混乱」を起こそうとしていると話した。当局は以前、ロシアがイラン製のシャヘド136というドローンを使用していると認めていた。
これらのドローンは徘徊型兵器という、通常の無人航空機のように飛行できる爆薬を搭載した小型兵器の一種だ。その航続距離は約2000キロで、一度標的を定めたらそこへ突っ込んでいって爆発することから「自爆ドローン」「カミカゼドローン」 としばしば呼ばれている。
ウクライナ側が公開した写真。東部ハルキウ州クプヤンシクの近くで撃墜したイラン製ドローンの残がいだという。
Ukrainian military's Strategic Communications Directorate via AP
マイロン氏は、イラン製のドローンは安くて技術的には「非常に原始的」だと話している。ただ、比較的低い位置で飛ぶので、ウクライナ側のレーダーにとっては捉えるのが難しい。民間人の居住地域だけでなく、戦場から遠く離れた軍の司令部や弾薬庫といった標的を攻撃することもできるという。
アメリカのバイデン政権は7月、イランがロシアにドローンの供給を準備していると語っていた。ただ、最初の供給は8月にあったものの、不具合が見つかったという。アメリカの政府高官は、イランのような国で武器を探し回るのはロシア軍がウクライナで苦戦している明らかな兆候だと指摘した。
ロシアがどのくらいの量のイラン製ドローンを保有しているかは分からないが、アメリカの軍高官は10月上旬、ロシアがドローンを「数百」単位で購入しようとしていたと認めた。ただ、現時点でロシアはそれほど大量のドローンを保有してはいないと語った。
シャヘド136の他にも、ロシアはイラン製のシャヘド129、シャヘド191、モハジェル6をウクライナで使用している。
マイロン氏は、戦争におけるドローンの使用は破壊的だが必ずしも決定的ではないと強調した。一方がその脅威にどう対応すればいいか学習すれば、そのシステムは戦略的価値を失うからだ。ウクライナ空軍はすでにシャヘド136を撃墜できると認めている。
10月8日には、2014年にウクライナから一方的に併合したクリミア半島とロシア本土を結ぶ、ロシアにとって重要な補給路の1つであるクリミア大橋で爆発が起き、その一部が崩落した。プーチン大統領とその側近は、すぐに爆発はウクライナのせいだとして報復を呼びかけた。ウクライナの政府高官や西側諸国の首脳らはソーシャルメディアを使って、ロシアによる一連の攻撃を非難した。
「プーチンの唯一の戦術はウクライナの平和な都市へのテロ攻撃だが、ウクライナを制圧することはできない」とウクライナのクレバ外相はツイートした。
「これは彼と平和について話し合おうとする全ての融和策を唱える人々に対する彼の返答でもある。プーチンはミサイルを手に交渉するテロリストだ」
(翻訳、編集:山口佳美)