第5回「ここは民主主義を守る国境だ」 準備を進めるエストニアの「前線」
連載 ロシアの隣で エストニアの危機感⑤:国境の壁
「スマホの電源を切れ」と、エストニアの警察幹部が言う。昨年12月、エストニア南東部にあるロシアとの国境沿いに、バスで向かっていた際のことだ。
「傍受されると思ってほしい」。淡々とした口調が逆に、真実味を感じさせる。
エストニアは東隣のロシアと、338キロにわたって国境を接している。川や湖を除けば135キロ。大部分は森林などが行く手をはばみ、往来は困難だ。
【連載】ロシアの隣で エストニアの危機感
ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まって、2月24日で丸2年を迎えます。ロシアの隣国であるということは、どういう意味を持つのか。エストニアの人々の思いや、ここ2年で起きた変化を通じて伝えます。
国境沿いに着く。木々が密集し、ロシア側からこの雪道を抜けてやってくるとは到底考えづらい。
だが、エストニア政府は昨年12月中旬、ここを含む国境沿いに、新たに長さ40キロのフェンスを完成させた。これまでの分と合わせ、陸地の国境の半分にあたる63キロに、物理的な「壁」が設けられたことになった。
「ウクライナが終われば、ロシアは何かしてこようとするはず」
このプロジェクトは2014年、エストニアの治安当局者が、国境付近でロシア側に拘束されたことを機に始まった。当局者は1年後に囚人交換によって帰還したが、両国の緊張が高まる理由の一つになった。
そしていま、この「壁」の意義は増している。
「ここはエストニアの国境だ…
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