TK(Vo/G・写真左)、345(B/Vo・写真右)、ピエール中野(Ds・写真中央)の3人編成で、'04年から活動するロック・バンド、凛として時雨。鋭くエモーショナルなサウンドスケープ、TKと345のハイトーン・ボーカル、シリアスな歌詞の世界観から生み出される独自の音楽性で、インディー・ロック・ファンを中心に高い人気を集めている注目株だ。'04年以降は毎年全国ツアーを行い、高い演奏力に裏打ちされた迫力のライブ・パフォーマンスで、ファン層を拡大させている。
ここにご紹介する『just A moment』は、そんな凛として時雨の、前作から1年9ヶ月ぶりとなるサード・アルバムだ。本作は、バンドとしてのファースト・シングル「Telecastic fake show」や、新境地のスロー・バラードを展開したセカンド・シングル「moment A rhythm」のショート・バージョンを含む、全10曲を収録した充実作。メタルやエモ、J-ロックを飲み込みこんだハードな楽曲を軸に、アコースティック・ナンバーや初のインスト曲もフィーチャーし、幅広い音楽性を示している。
そこでLOUDは、凛として時雨の三人を直撃。独自の音楽性が誕生した背景と、『just A moment』の内容について、対面で話を聞いた。
結成の経緯
――まずは、凛として時雨(以下、時雨)結成のいきさつから教えてください。
TK「元々は僕と345を含む四人でバンドをやっていたんですが、メンバーの就職でバンドが解散してしまったんですよ。そこで、バンドを続けようと残ったのが僕と345だったんです。当時はまた四人で活動したいと思っていたけど、新たにメンバーを二人見つけるのは大変なんで、とりあえず345はボーカルとやったことのなかったベース、僕もやったことのなかったボーカルとギターという編成で活動していました」
――そこでツイン・ボーカルになったんですね。通常より1オクターブ高く歌うようになったきっかけは何だったんですか?
345「いつの間にか高くなっていましたね」
TK「スタジオで初めて練習したときに、あまり声が聴こえなかったんです。そこで、上げてみたらどうなるのかな?って思ったのが発端ですね。だから、高くすることで切り裂いている感じや、ヒステリックさを出そうという狙いがあったわけじゃないんですよ」
――なるほど。では、この印象的なバンド名になった由来を教えてください。
TK「何となく日本語にしたいという思いがあって、キーワードの一つに、“凛として”が出てきたんです。で、僕のつくる曲について“急に降ってくる雨みたいだね”と言われたことがあったんで、“凛として”と“時雨”をくっつけた感じだったと思います...(笑)」
――日本語へのこだわりがあったんですね。その後メンバー・チェンジを経て、'04年にピエール中野さんが加入したきっかけは何だったんですか?
ピエール中野「時雨のホームページで曲を試聴して、ライブを見に行ったのが最初でした。そのうち自分の主宰イベントに時雨を誘うようになって、当時のドラマーが抜けることになったときに、試しに“叩かせてよ”と言ってみたんです。それで実際に叩いてみたら良かった、という感じですね」
――最初から好感触だったんですね。
ピエール中野「いや、最初は全く息が合わなくて、違和感がありました。当時は、“大丈夫なの?”といろんな人に心配されていたらしいけど、僕は時雨が好きだったし、バンドなんてすぐにでき上がるモノではないことくらい分かっていたから、周りの意見は気にしなかったんですよ」
TK「当初は、ドラムwithツイン・ボーカルみたいな感じでしたね(笑)。違和感があったのは、バンドの見せ方をそこまで確立できていなくて、三人が自分なりの解釈でやっていたからなんでしょうね。でも、直後に時雨初となる全国ツアーを行って、その中間あたりからだんだん馴染んできた感触がありました。そのツアーで、時雨の軸となる部分ができ上がったと今は思っています」